ボカロ日和

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「いい歳したオッサンが何着てんだ全く…さっさと元の服に着替えてきなさい!」

「えぇーでも俺…」


閻魔は渋っていたかと思うとまた鬼男を見上げる。


「ねえ鬼男くん!本当に変?俺、そんなに似合ってない!?」

「は、はぁ…?」


鬼男は潤んだ目で見つめてくる閻魔をもう一度よく見てみる。

襟から覗く白い鎖骨、細い腰、スカートから伸びる生足…。


「………」



…ゴクッ。



「…ハッ!?“ゴクッ”!?え!?あああ有り得ない有り得ない!なんで生唾なんか飲んでんだ!相手はオッサンだぞオッサン!いい歳ぶっこいてセーラー服とか着ちゃってる変態大王イカ!!!」

「えっ、お、鬼男くん!?」


今、何か変な感情を抱いたような気がした鬼男は慌てて自分の頭を殴りつけて戒めた。

鬼男の突然の自虐行為と辛辣な言葉に閻魔はただ焦っている。


「鬼男くん…そんなに怒り狂うほど俺って似合ってないかな」

「し、知るか!!とりあえずさっさと元の格好に戻しなさい!」

「えぇー…でも鬼男くんだって男だったらこういうの憧れないか!?ほらっ…可愛くない!?」

「ポージングとかしてみるなよ鬱陶しい!!」


ついに鬼男はマウスカーソルの矢印の先でグサッと閻魔を刺してやった。


「い、いたッ!ごめんなさい!鬼男くん許してー!!」


鬼男は自分の顔が熱いのは気のせいなんだと思い込もうとしながらカーソルをザクザクやる。


「ちょ、馬鹿!本当に痛いからやめッ…!何このマスター、ちょっとマジで辛辣すぎない!?」

「黙れ変態大王イカ!!もっと喰らえ!!」

「ひいぃぃッ!!」


…絶対に気のせいだ。

そう思いたい。

……マウスカーソルで刺したらその度にスカートがひらひらしたり、泣きそうな顔をしたりしてるのがグッときて ついついお仕置きをやめられない自分がいたりするなどと…。


(く、くそ…なんだコイツ可愛いじゃねえか畜生、絶対に制作者の罠だな!?こうして世に二次元から抜け出せない哀れな男達が増えていくわけだな!?)


しかしたかがソフトとは言え同性の二次元にハマってそうなる人間もそういないことに鬼男は気付いていなかった。


しばらくしてようやくマウスカーソルをけしかけるのをやめた鬼男は、小さく溜め息を吐く。


「これからずっとその格好でいる気なんですか?」

「まあそうかな!あ、でもずっと同じ格好っていうのもつまらないからなぁ。用意でき次第、黒ソックスをニーハイに変えたりしてみたいなぁ…あともっと違うセーラーとか。ある意味コスプレ?!鬼男くんにちゃんと全部見せるからな!」

「み、見せていらん」


キモさと可愛さのギリギリのラインで来るもんだからどう反応していいかとかで大いに疲れる。


「そういうのは僕がパソコンを付けてないときに一人で勝手にやって下さい…」

「えぇーっ!?なんでだよ!!」


ムッと怒った閻魔がブンブンと腕を振る。


「大体なぁ!俺がこうやってセーラー服とか着て鬼男くんに見せたのも鬼男くんに気に入ってもらいたいからで、別に俺セーラー服好きだけど鬼男くんがいなきゃ着ようとまで思わないし鬼男くんに可愛いと思ってもらえなきゃ……」


そこまでボーカロイド得意のノンブレスまで言った閻魔は、今ようやく自分が口走った言葉の内容を理解したようだった。

鬼男は唖然として閻魔を見ている。


「……大、王?」

「………う…わ…」










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