ボカロ日和
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そして夜。
「だぁーっ疲れた!もう集中力続かない!!」
マウスを放り出した妹子は死にそうな声で「あーあー」呻いた。
「一応一区切りついたし…今日のとこはこれでいいよな…」
何より、この辺で一度ぐらいテストしておきたい。
一体どんな具合が聴いてみたいのだ。
妹子は再びパソコンに向かうと、マウスカーソルをブンブン揺らして太子を呼んでみた。
「太子ー、いますかー?太子ー?」
すると、「おー!」と言う声の後に、ディスプレイ上にポンと現れる。
「あ、いた!何処行ってたんですか太子?」
「ん?ちょっとロイツマる準備をな!」
「ロイツマるって……ていうか準備って?」
「フフッ、じゃーーん!!」
太子が得意気な顔で出してきたのは…
「…棒?」
だった。
「アイスの棒だ!」
「えぇ!?やけにデカくないですか!?」
「特注の巨大アイスの棒だからな!準備するのに苦労した…」
「もしかして準備って……」
アイス食べてやがったのかコイツは。
「ご、誤解するなよ!そのアイスがすっごい不味くて食うの大変だったんだからな!?ウルトラデリケートな私が腹を壊さずに立っていられるのが奇跡だと思え!!」
「はぁ…そうですか」
半ば適当に流すと、妹子はマウスを掴む。
「じゃあ太子、今からテスト再生しますからそんなゴミ捨てて」
「ゴミとは失敬な!!まだ分からんのかお前、コレを振るんだよ、この棒を!!」
「……無駄にこだわりましたね…」
「勿論だ。妹子との初めての曲だからな!」
変なところでキュンとしてしまいながらも妹子は「じゃあ再生しますよ」と声をかける。
「ああ、いつでも来んしゃい!!」
……実を言うと、かなり緊張している。
初めての曲…初めての打ち込み…。
どんな音も聞き逃すまいとヘッドホンを耳に押し付けると、妹子は恐る恐る再生を押した。
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