ボカロ日和

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「結構なプログラム能力が必要でしょう…」

「いや、そうでもなかったぞ?スカート作りたいと思って想像しながら一晩中力んでたら出来た」

「なんで出来るの!?」


太子はフォルダをクリックすると、中のファイルを出してきて妹子のそばにドロップする。


「ほら、コレだ。妹子のジャージが赤いから、ちゃんとデザインも合うように赤いのを作ったんだぞ」

「ほ、本当に出来てる…。プリーツもしっかり出来てるし、調節のホックも裏地もしっかり…」


逆に気持ち悪い。


「太子、なんでこんなに詳しくスカートの仕組みを…」

「なッ、おま、私を変態扱いする気か!?」

「だって…」


妹子は先ほどのフォルダに座りこむと、スカートをひらひらと振る。


「でも、いくら出来が良くったって履けませんよこんなの…超ミニじゃないですか…」

「いや、本当はもうちょっと長いのを想像してたんだけど力みが足りなかったみたいで…」

「折角ですけど履けませんよ」

「なんでだよ、折角履いてもらえると思って楽しみにしてたのにー!!はーけ!はーけ!!」

「変なコールすんな!!履きませんよ!手拍子をやめろ!!」

「履くまでやめないぞ!妹子の可愛いスカート姿を見るまではやめるものかーー!!」

「だっ、だから可愛いって何ですか、女の子でもないのにーーーーー!!!!!」










「………女の子じゃ、ない?」

「当たり前ですよ……もしかして太子、僕のこと…」


長い沈黙の後、またしても沈黙が続き……。


「女の子だと思ってたーーーーー!!!」

「やっぱりそうかーーーーー!!!」


太子は頭を盛大にデスクトップに打ち付けた。

その衝撃で妹子は思わずよろけて座り込む。


「太子、僕は妹子っていう名前ですけど、プログラム上男なんです!」

「いや、名前って言うか、赤いし可愛いから女の子かと思ってた…」

「だから可愛いって言わないで下さい!それに一人称だって“僕”じゃないですか…!」

「僕っ娘だと思ったんだもん…!」

「………っ!」


全くこの男は駄目だ。

妹子は長い溜息を吐いて頭を掻く。


「まあ、ボーカロイドですから高い音も出せますけど…男なんです。これでスカートは諦めてくれますよね?」

「あ…諦めん!!」

「何でだよ!?」

「妹子が男の子でも可愛いことに変わりはない!!履け!!一生のお願いだから、履け!!」

「お願いなのに命令形じゃねえか!!」


どうしてこの男はただのソフトにスカートを履かせることにこんなに必死になっているのか…。

妹子は頭痛がする思いでスカートを見る。


(…まあ、別に…履くぐらいなら)


仕方ないかもしれない。

音痴だと罵られ、アンインストールされて路地裏に捨てられてしまった自分を再びインストールしてくれた彼の一生の願いなのだから。


妹子はスカートに足を通して腰の丁度いい位置でホックを止めると、机に突っ伏して凹んでいる太子を呼んだ。



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