ボカロ日和
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ウィーーン……ガガ、ガガ。
(ん……?)
この音、聞いたことがある。
いつ?どこで?
何の音だっけ…。
「ほらー妹子!起きろ!この私が起きろっつってんだぞ、さっさと起きんしゃーい!」
…なんか癇に障るエラそーな声が聞こえるような気がするけど絶対気のせいだ…名前呼ばれてるけど…。
「いーもーこー!!」
「るっせーーッ!!」
あ、起きてしまった。
叫んでしまってから落ち着いて見ると、妹子は今、デスクトップにいた。
ディスプレイの向こうには見知らぬ男、どうやら彼が自分を呼んでいたらしい。
「あーやっと起きた。この寝ぼすけボーカロイドめ…。しかし本当に喋るんだなー」
妹子は目を瞬いて絶句していた。
「…おーい、妹子?」
「貴方、僕を…インストール、したんですか?」
「そうだけど?」
妹子は驚いていた。
この男がいきなり自分を呼び捨てにしている事が気になったが、それ以上に…。
「僕で…いいんですか…!?」
「え?なんで?…もしかして不良品とか!?えぇー困るよ!ウイルスとか持ってないよね!?」
「も、持ってないです!でも…」
「でも?」
「……僕、一度棄てられた身ですから…」
妹子は俯き、小さく肩を震わせながら呟く。
「僕…マスターから頂いた歌、すぐに覚えるのには自信があります。滑舌も悪くないし、早口だって言えるし、セリフも得意なんです!……でも」
栗色の瞳から涙が溢れる。
「でも…僕…っ」
「音痴なんです…!!!」
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