SIRENSHORT

□痴漢にヤンを、貴方にデレを
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(はぁ…都会は喧しいな…)

吊革に捕まって、やや前方にいるいろはを見る。
人混みに紛れて一人立っているいろはが何だか遠く感じて、尾行がバレてもいいから近付きたい、なんて思ったときだった。

――ピクッ…

いろはの身体が小さく震え、顔が歪んだ。
それに気付いた宮田はいろはを注視する。
ゴソゴソと身体を捩らせるいろは…宮田はハッとした。
後ろに眼鏡の中年男…手が厭らしくいろはの尻や太ももを撫でている。

(あの男…!!)

ついにはスカートの中にまで指が及び、いろはが目を見開いた。

宮田が吊革を離し、無理にそこへ向かおうとした時だった。

今まで黙って震えていたいろはが急に男の手首を鷲掴み、立てた爪を食い込ませながら平行方向に動かして、腕を裂くように引っ掻いた。
そしてバシッと腕を掴んで振り向く。



「テメエ誰の許しを得て白昼堂々痴漢なんざしてやがるんだ、ああ?」



一瞬、誰が言ったのか宮田には分からなかった。
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