Replica*Doll

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『名前はね、ルーク…、君が決めるべきだと思う』
「俺が…?」
『もうこれ以上は余計なことは言わない。言ってもどうせ分からないさ』

そう言うと、少年ガイはまたスタスタと歩き出した。
呆然とするルークを振り向くことなく、ガイは無表情で口を開いた。

『…ここまではほんの序章…あいつの心は悲しみも苦しみも知らなかったからこの世界だって閉ざされたままだ。でもね、そろそろ始まるよ。あいつの闇が』

とん、と最後の一歩を踏んで、ガイは振り向いた。
ルークは何となく見ていたその姿に、また誰かの面影が重なった気がした。

やはり少年ガイよりもいくらも大きくて、それはルークとほとんど変わらない大きさに見えた。
赤くて長い髪が、振り向くのに合わせてゆらりと揺れた。

…一瞬の幻だった。

ルークはその一瞬、自分を見たのではないかと思いながら、その面影が消えて思考がクリアになってくると、そうではないことに気付いた。

違う。
あれは俺じゃない、俺は知ってる。
あいつを…。



――アッ……シュ………?



先程唇から漏れた知らない名前が、今見た幻影とカチリと合わさった。



「………………――あ」



ア ッ シ ュ



「………あ………あ…あ…っ、ああぁ…あ…ア…ッシュ…!?」

ルークの異変に気付いた少年は怪訝な顔をして、アッシュという名前を聞くとゆっくりと目を見開いた。

ルークは後退っていた。
今目の前にいるのは確実に金髪の少年ガイラルディアだ。
彼は確かにそう言った。
自分はガイラルディア・ガラン・ガルディオスだと。

だったらアッシュとは一体誰なのだろう?
小さな少年ガイの姿に確かに重なった、赤い面影。

「…アッシュ…?」

知らない人では、なかった。
知っていたはずだ。



何故ならこの人は、俺を。



「ぁ…あ………」





暗い洞窟、重い鎖。

ゆっくりと満ちていく海水に、叫ぶ気力もなくして沈んでいって。

酷く傷付けられた、心も、身体も。

全てアッシュが、あの鋭い眼差しが。





『お前は…俺から何もかも奪って生きてきたんだ…』





――生まれてきて、ごめんなさい。










幸せだけの世界なんて、あるわけなかったのに。
俺は死んで、生きることから逃げ出して、上手くいかない世の中から逃げ出して。
俺を苦しめてた愛も憎しみも、全部始めから無かったみたいに彼のいないあの場所へ、嘘の世界に浸って、俺は罪の証を忘れてた。
――アッシュ。
お前が誰なんだか、全く分からないけど、何となく分かった気がする。
今目の前にいる金髪のお前が本当は誰なのかなんて分からないけど、アッシュ。
俺は…

お前の咎めるような鋭い眼光を、憶えている――





「あああああぁぁぁッッ!!!」










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