Replica*Doll

□3.5
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ガイは、今日も疲れて帰ってくるのかな。
それでもまた俺のために頑張って、だったら何が、誰がガイを休ませてあげるの?
どうすればガイは元気になれるんだろう。

初めて思ったことだった。
毎日毎日、新しいことを考えていく。
毎日毎日、初めて色んなことに気が付いていく。

ガイはいつだって俺のために沢山頑張ってた。
俺はガイがいなきゃ何も出来ないんだ。
ガイが好きで、いつかガイに迷惑をかけないようになれたら。
そしたらガイは、俺のこと好きになってくれるかな。
ガイは今、沢山迷惑かける俺のことなんて、嫌いかな。
ガイは、毎日毎日。
頑張ってるんだから。

俺が。
俺が、ガイに何かしてあげられたら。

白い家の扉が閉まった。
その中できっと女性は、疲れて帰ってきた男性に微笑んで、お疲れ様、なんて言う。
そしてそんな言葉が、男性の、明日も頑張って生きていく糧になるのだろう。

だって俺も、そうだから。
ガイの一言一言が、とても優しくて、嬉しいから。

なあ、俺は…ガイのために何ができるの?
気付けば頬が濡れていた。
視界が歪んで、ルークはブンブンと首を振り、目をこする。
もぞもぞと足を動かし、ベッドから下ろして床に付ける。
きゅっと唇を噛み締めて前を見据えてから、大きく息を吸った。










**********










一日の仕事を終えて宮殿から帰り、屋敷の門の前でまともに歩けないルークしかいない自分の部屋を見上げれば窓は真っ暗だ。
早く部屋に戻って灯りを点けてやらないとな、そう思ってガイは門を開く。
扉を開けると、使用人がお辞儀をしてガイを出迎える。
おかえりなさいませ。
それにガイは微笑んで応え、階段を上がる。
扉を開ければそこには、きっと椅子の上に座ってガイを待っているルークがいる。
腹も減っているだろうから、早く食事も持っていってやらなきゃならない。
ガイは一人でに笑みをこぼして、自室の扉に手を――

――ガンッ!!

「あだッッ!!?」

…いってぇぇ…と、悲鳴のような声に続けてガイは痛む右手を押さえた。
反射的に屈み込んでいたガイは、右手を擦りながら今しがた自分が右手を強打したドアノブを見上げる。
今、明らかに手をかける寸前のドアノブが動いた。
ドアノブが、ガイが触れてもいないのに動いて、ドアノブを掴み損ねた右手は勢いよく戻ってきたそこに思い切り突き上げられた。
指が。
指が痛い。
ガイは予想外の衝撃に涙目で扉を開く。
そして、目を見開く。

「………ルー…ク…?」

扉の向こうには、同じく涙目で左手を押さえてそこに座り込むルークの姿があった。

「…お前、また動いたのか?」

苦笑いを零しながら扉を閉め、ガイはルークのそばに屈み込む。
ルークは左手を右手でぎゅっと握り締めながらガイを見上げて動かなかった。
ただ、その口がわなわなと震えて言葉を紡ごうとしている。

「いっ…い…、いっ…」
「ん?」
「…い、…たい…っ」
「はいはい、ルーク…痛かったなー」

ついに左手を抱き込むようにして下を向いてしまったルークに、ガイはますます困り果てたように笑って頭を撫でる。
そのせいでルークは余計にぐすぐすと泣き出してしまうが、他にあやす方法なんてないのだから仕方ない。

「左手が痛いのか?」

自分の右手の痛みも忘れて、ガイはルークの左腕を見ようと手を伸ばす。
ルークは大人しく左手を差し出すが、どうやら大事にはなっていないらしい。
一安心したガイは、ルークの左手を擦ってやりながら笑う。

「どうしたんだ?扉で打ったのかい?」
「こ…、こ、け…うぅ」
「こけたのか…」

そりゃあ痛かったな、とガイは慰めるように微笑んでやったが、ルークはすぐに目をぎゅっと閉じると、ガイに預けていた左手を引っ込めた。
そして右手でよろよろと床を押さえ、それを支えにするように足を動かすと、よろめきながら立ち上がった。
その途中でふらりと倒れるのをガイは慌てて受け止めたが、それでもルークは諦めないままガイにしがみ付いて足を立たせた。
それからガイを見上げる。
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