Replica*Doll

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屋敷に帰って、ジェイドに言われたことをそのまま話して見れば、確かに顔色が悪いとメイドにも言われ、やはり休むことになった。
軽く食事を摂って薬を飲んで。
次第に頭がぼおっとしてくるのを自覚する。
体調が悪いのは本当だったらしく、今になって身体がだるくなってきた。
ルークはふらふらしながら自室へと向かい、剣も腰から外さないままに、一直線にベッドに向かおうとした。
…が。
視界に、入ってしまった。

「…え……?」

広い部屋の角の方。
四つある部屋の角。
その一つ。
窓から差す光も届かない、薄暗い部屋の隅に、更に暗い影が落ちていた。
影はぽっかりと開いた穴のように何処までも真っ黒で、その中で炭のような闇が疼くように震えていた。
これは穴なのだろうか?
それとも壁にこんなおかしな色が付いただけなのだろうか?
それにしても一体どうして?
人間というものは不可思議な物事を前にして怯えずにはいられない。
ルークもまた、その影の正体を頭の中で必死に考えながら、この影は自分に何か多大な被害――例えばいきなりこの影が部屋中に広がってルークを食べてしまいやしないか、なんてことだ――を与えるのではないかと疑って、後ずさるようにその影から離れた。
ベッドにのしかかるようにしながら、身体はしっかり部屋の隅を見ている。
影は遠くから見れば見るほど不気味だった。
影の中に揺らめく闇は、怯えるルークを誘うように震え続けている。
ルークは助けを呼ぼうとした。
廊下にはきっと使用人がいて、すぐにルークを助け出してくれる。
けれど、ルークの喉はそうしようとしなかった。
大声を出すと、廊下にいる執事ではなく、この影の化け物が自分のもとに向かってくるような気がした。
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