Replica*Doll

□12
2ページ/15ページ

ルークの目から涙が滲んで、それは綺麗な玉になって上へと昇っていった。
いや、本当はルークの落下速度が速すぎただけだったが。
落下なんて緩やかな降下にしか感じていないルークには、その涙が天へと昇っていくように見えた。

(俺の代わりに…ガイに会ってきて、とか、無理かな?)

ルークはまだほとんど何も知らない無知な子供だったので、もしかしたらルークが知らないだけで、本当はそんなことが出来たりはしないだろうか。
それなら代わりにガイを、一度だけでいいからその透き通った光に映して欲しかった。
会えなくたっていい、一度だけ、遠くから見るだけでいいから。
金の髪を、蒼の眼を、優しい微笑を。

(もう一回だけでもいいから、ガイに会いたい…)

本当は欲求なんて尽きることはなかった。
声が聴きたい。
笑顔が見たい。
そばにいたい。
そばにいて、体温を感じて、例えばガイに抱きついたりして、普通だったら恥ずかしくてできないっていうぐらい、甘えたかった。

(こんなに遠いよ、ガイ)

ごめん、ガイ。
ごめんなさい。
俺は、ずっとガイを騙し続けてたレプリカなのにな。
ガイが本当に大切にしてたのはアッシュであって、俺みたいな人形じゃ、ない。
なのに俺、まだこんなにガイを求めてるなんて、なんて汚いんだろう…。
それでもガイが言ってくれたこと、俺をぎゅっと抱きしめて、俺達に別れなんてないって言ってくれたことに、ずっと期待してたんだ…。

なあガイ、俺、もう駄目な気がする。
これ以上、何も考えられない、ガイのことしか、ううん、もう、ガイのことも…。
ガイ、俺、ガイが俺をどれだけ嫌いになっても、俺はずっと、ガイのこと、好きだった…。
もうガイに会いたいなんて思わない。
もう前みたいに、ずっとガイのそばにいたいなんて思わないから、お願いだ。
ガイのことが好きだって思うこと、これだけは、赦して…?










では世界よ、さようなら。
俺は、俺の意識は、本来在るべき処へ…熱くて赤い、暗い悲しみの溶岩の中へと沈んでいきます。
俺が見たもの、俺が愛したもの全て、俺がいなくたって、廻り続けるよ。
だから俺は、たった一人、もう世界を見ることもないでしょう………。










――グシャッ!!

「っが…ッ!!」





酷い勢いで地下の最果ての瓦礫へと叩き付けられたルークは、剣のように鋭い瓦礫を背中から腹へと貫通され、大きく目を見開いて――。

その緑の瞳は次第に、まるで作り物のように虚ろな色へと変化していった。










**********
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ