Replica*Doll

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愛しいもの。

憎らしいもの、全て。

いっそ全てを壊せてしまえたら、こんなに悲しむこともないのかも知れない。

目下に大きく口を開けた奈落を見つめて、そう思った。





**********





ああ…身体中が痛い。
痛いよ…。
俺、どうしたんだっけ?
爆発に…巻き込まれて、そう。
急に足元が崩れて、俺はその穴の中に引きずり込まれるように落ちていった。
あの組織の奴らも、きっと爆発で死んだだろう。
俺も、死ぬのかな…。

教会の地下は予想以上に広く、地下の各階層の床も天井も残らず崩れ落ちて、ルークの焼け焦げた身体は何処までも落ちていった。
ルークはぼんやりと、片腕をかざした。
届かない、届かない、何処にも、その腕は。
腕は何も掴むことなく、ルークは何と無く分かっていたそのことを改めて実感すると、目を閉じた。
沢山の瓦礫と共に物凄い速度で落ちているはずだったが、ルークには全ての速度がとてもゆっくり感じられた。
ガラガラと全てが落ちていく絶望的な轟音も耳には届かない。
ルークの中で、全てが穏やかに流れていった。

(…アッシュに、会えなかったな、結局)

伸ばした腕の拳を緩く握り締めて思う。
折角グランコクマを飛び出してここまで来たというのに。

(………)

けれど、よく考えてみれば、アッシュのことはどうでもいいと思っているようだった、今は。
アッシュに会えなかったことは確かに情けない。
でも今は、そんなことはどうだって良かったのだ。
だって思うことは、彼ばかり。

(………ガイ、…この町にいるってあの人が言ってた…)

そう思った瞬間に、ルークは目を見開き拳を強く握り締めた。
ガイ、今何処にいるの?
アッシュよりもずっと気になって、心配で、不安だった。

(俺…俺…)

今までずっとそう思うのを避けてきた。
けれど今になって、やっと。

「俺…アッシュに会わなきゃって言っておきながら…一番…ガイに会いたかった…」

落下してゆきながら、ルークは自嘲気味に笑った。
言ってしまえば、ガイのことを思えば自分の正体なんて何だって良かった。
ただ、ガイに会うのが怖かった。
棄てられると判っていたから。
ガイはもう、前みたいに愛してはくれないって、知っていたから。

(それでも俺、ガイに会いたかったよ…)

ガイから逃げながら、いつかガイに会える日を探していた。
もしかしたら旅の先で、ガイに許してもらえる何かが起こるかも知れない。
ガイが追いかけてきてくれるかも知れない。
でもガイはここにいない。
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