Replica*Doll
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もう、何も聞きたくない。
もう、何も見たくない。
そんな絶望がルークを襲い続けていた。
…『ルーク』?
いや、違う。
俺はルークなんかじゃない。
ただの、人形。
この目の前にいる男の………。
**********
「…つまり、ヴァンが此方にルークがいることを確認し、そしてアッシュに報告した後、アッシュ自らが此方へ赴きルークを誘拐した…と、いうことですか?」
「今はその線が強いでしょうねぇ」
考え込むイオンに、ジェイドは事も無げにあっさりと言ってみせた。
「でもなんでアッシュがそんな事をするんですか、大佐?」
「問題はそこですねー」
「真剣に考えて下さいよぉ、大佐!でなきゃまたガイがブチ切れちゃいますよぅ、ねーガイ?って、ガイ?」
「此方は此方で考え中、ということですね」
ガイは一人で立ち尽くし、過去のことに思いを馳せていた。
しかしジェイド達の視線に気が付くと慌てて顔を上げ、
「…え?な、何か言ったか?」
「何でもないですけどー」
「はい、何でもありません」
アニスとジェイドの態度にガイは呆れたような顔をするが、それはすぐに引っ込む。
「どうやら大分落ち着いたようですね、ガイ」
「ああ、考え事してたら、随分頭も冴えてきたよ…」
ガイは額に手をやり息を吐く。
「そうですか。ではガイも落ち着いてきたところで、宿に長居しては女将さんに失礼ですから一度ガイの屋敷に戻りましょう」
「そうですねー、ここ、元々オラクル兵が駐留するために借りた宿ですし」
そしてガイが合流した一行は、一度屋敷に戻ることになった。
**********
ガイの屋敷に着いた一行は、ガイの私室のテーブルにそれぞれ席を設けて座っていた。
メイドが紅茶を淹れ、テーブルに静かに置いて退室する。
扉が閉まるのを確認すると、ジェイドが気分も新たにといった感じで、さて、と微笑んだ。
「では、アッシュとルークについて考えてみましょうか」
「なんだかルークが誘拐されてることを忘れそうな晴れやかさですね、大佐」
「アニ〜ス?そのことはガイが暴走するのが厄介なので禁句とします」
「は〜い、分かりましたぁ」
「…お前らな…」
そんな間の抜けた会話が繰り広げられる中、イオンはその様子を見つめてにこにことしている。
ガイが軽くジェイドを叱ると、ジェイドはまたそれを軽く受け流して…そして真剣な眼差しで前を向いた。
「では、おふざけはこの辺にして、本題に入りますよ」
「第一に考えるべきは、アッシュとルークの関係、でしょうか」
ジェイド一人が一言発するだけで、部屋の雰囲気はガラリと変わり、一気に張り詰めたものになった。
先程までにこにこしていたイオンも、話をきりだすジェイドに発言をして、その辺りは流石導師といったところだ。
「実はもう、私の中で大分結論は出てしまっているのですが、ね…」
ジェイドの意味深な発言に、ガイが顔を顰める。
「…どういう意味だ?あんたの結論を聞かせてほしい」
「…そうですねぇ…ガイ。貴方がルークを連れて帰って来たとき、私は貴方に協力をする、と言いましたね?」
「ああ、言ったな。…まさか、違うのか?」
腕を組むガイに、ジェイドは軽く頭を振る。