Replica*Doll
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グランコクマに、朝が来た。
とても爽やかな朝だった。空には雲一つ無く、相変わらず響き続ける水の音が気持ち良くて、新鮮な空気と暖かな陽射しが包み込んで、
「最っっ悪!!」
…だった。
「嫌だ!嫌だ!本当に嫌だ!何もかも嫌で最悪だ!!」
ベッドの中でシーツにくるまり顔だけ出して毒づくと、朝風呂を終えてさっぱりなガイは、昨日あれだけ夜更かしをしたにも関わらず血の気の良い顔でハイハイと頷き、さっさと着衣を整えていった。
「なんでだ?なんでなんだ?俺もガイもいっぱい…!…その…アレ…い、色んな事したのに!なんで俺は腰痛くて立てなくて、ガイは平気なんだ!?」
「ルークは下だったからだろ」
「俺は寝不足なのにガイはなんか全然そんなじゃないし!」
「溜まってたモン全部出せたからなー、久々にぐっすり眠れたって感じだったな」
「し、知るか!!」
ルークはそれだけ大声で言い放つと、不貞腐れたようにシーツを被って丸まってしまった。
腰がギリギリと痛む。
…昨夜延々続いた情事によって腰痛を起こしたのだ。
あれから理性も何もかも吹っ飛ばしたガイは力尽きるまで滅茶苦茶にルークを抱き、ルークもその快感に振り回されながらも同じように理性を失い抱かれ続けたのだ。
ガイはルークを抱きながら「好きだ」とか「愛してる」とか言っていたし、ルークもルークでガイに抱かれながら「大好き」とか「もっと」とか――。
(あーーー!!嫌だ!嫌だ!俺は何も知らない!そんな事言ってない!ましてやそんな、そんな…そんなぁぁ…!!)
人間ってこんなにすごいことができるのかと思い知った夜だった。
とにかく何も考えられなくなるぐらい気持ち良くて、嬉しくて、苦しくて、とにかくガイがカッコよくて――。
(違う!!ガイは変態だ!!あんなジェイドみたいに爽やかに笑いながらセ、セ…!!…とか、有り得ない!!)
確かに、嫌ではなかったが。
「ルーク、今日は預言の会議があるんだから、早く支度しとけよ?」
「…俺も出るの?ガイは?」
「いや、会議には出ないが…色々忙しいから雑用だな。今日は遅くまで帰れそうにないし、陛下から許可も出てるからルークを連れて行こうと思ったんだが…嫌か?」
嫌と言うか、腰が痛くて立てない。
ルークはそう言おうと思ったが、そのせいで今日一日ガイに会えないのは、嫌だったので。
「い、行く!!」
ほとんど痛みを忘れたように、気合で立ち上がった。
**********
「ででっ、昨日は何のお話をしてたんですかぁー?」
さっさと身支度を整えてイオンに宛がわれた部屋に来たアニスは、イオンの髪を梳かしながら鏡に映るイオンの顔を見た。
イオンは大人しく椅子に座り、にっこり笑っている。
「いえ、少し気になったことを確認しただけですから、大した話ではありませんよ」
「むー。それが気になるんですぅー!!」
ぷくっと膨らむアニスの頬に、イオンがくすくすと笑う。
「残念ですが、機密事項です。お教えできません」
「ひどーい…」
アニスは完全に拗ねてしまいながら、イオンから髪飾りを受け取ってそれを付けにかかる。
丁度その時、コンコン、と扉がノックされた。
「導師イオン様、導師護衛役アニス、おはようございます。朝食のお迎えに上がりました」
アニスがイオンの髪を弄りながら、顔だけ扉を向いて返事をすると、ガイが入ってくる。
そしてガイは入り口に凭れかかるようにしながら、けれど会釈と挨拶だけはちゃっかりとして見せた。
しかし次にはそれすらも消えて。
「イオン、アニス。朝食の準備ができてるから、支度が済んだら応接間に移動だ」
「あっガイだ、おはようー!」
「おはようございます、ガイ。すぐに行きます」
髪飾りを付け終えたイオンが立ち上がり、アニスもそれに続く。
「ねえねえ、ルークは?」
「ルークならその辺で遊んでるんじゃないか?…と、来たな」
ガイが廊下を見遣れば、パタパタと走ってくるルークがいて。
「ガイ、速いって…!」
「…ついてきてたのか、アレ?しゃがみこんでただろ、遊んでたんじゃないのか?」
「あ、あれは腰が!」
言いかけて、イオンとアニスの存在に気付いて黙り込む。
昨夜の恥ずかしい行為を言えるはずがないのだ。