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□一日おこさま天獄
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死者を天国や地獄へ振り分ける、ここ冥界に休みの日はない。

下界で人が死なない日などないからだ。


(はー…たまにはゆっくり休みたい)


閻魔ではないが、真面目な鬼男も流石に疲れが溜まっていた。


「(最近は死者の数も多いしな。下界の何処ぞで戦争でもやっているのか…)閻魔大王、おはようござ――」


欠伸をかみ殺しながら仕事部屋の扉を開けた鬼男は、目の前に広がる光景を見て唖然とした。

必死に我慢していた欠伸も引っ込んでしまうほどの衝撃。


そこには、『大王』と書かれた見慣れた大きな帽子、着物を着た………見慣れぬ少年が座っていた。


「………は?」


あまりの驚きに間抜けな声しか出ない。

鬼男は我に返ると急いでドアを閉めた。

そして頭をフル回転させる。


(だだだ誰だ今の!?オレの見間違いでなければ、今、大王の机に大王の格好した5歳くらいの子どもがいた気が……っ)


しかも、外ハネの黒髪に白い肌、顔付きが閻魔そっくりだ。


「まさか隠し子!?」


恐る恐るドアを開けると、そこには確かに子どもがいた。


「あのー…僕、そんな所で何してるのかな?」
「ん?」


子ども特有の高い声。
パチパチと目を瞬く少年を見て、鬼男は頭がクラッとした。


――違う。
確かに似てるけど、こんな可愛い子があんなイカの息子なわけがない。


「僕、何処から来たのかな?パパとママは?」


子どもの視線に合わせて屈み、引きつる笑顔で訊くと、少年は大層かわいらしげな仕草でコテンと首を傾げ、言ったのだ。


「なに言ってるの、鬼男くん?おれはずっと昔からここの王様でしょ?」

「大王だったーーーーー!!?」


鬼男は慌てて小さな閻魔を抱き上げ、全身を眺めるように天井に掲げる。


「どうしたって言うんですか大王!!なんでそんな面白いことになってんですか!?」

「ちょ、たかい!おろせ!おろせ!」

「嫌です、理由を言いなさい!」

「厳しいなキミ!」


まだ幼いためか、上手く呂律の回らないふにゃふにゃした声で閻魔は「うー…うー…」と唸った。

鬼男の胸がキュンと鳴り、力が抜けて腕がガクンと下がると閻魔が「ぎゃーごめんなさい!あやまるからすぐに下ろさんといてー!」と、やっぱり可愛い声で半泣きになって言った。



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