OTHERSHORT
□一日おこさま天獄
1ページ/3ページ
死者を天国や地獄へ振り分ける、ここ冥界に休みの日はない。
下界で人が死なない日などないからだ。
(はー…たまにはゆっくり休みたい)
閻魔ではないが、真面目な鬼男も流石に疲れが溜まっていた。
「(最近は死者の数も多いしな。下界の何処ぞで戦争でもやっているのか…)閻魔大王、おはようござ――」
欠伸をかみ殺しながら仕事部屋の扉を開けた鬼男は、目の前に広がる光景を見て唖然とした。
必死に我慢していた欠伸も引っ込んでしまうほどの衝撃。
そこには、『大王』と書かれた見慣れた大きな帽子、着物を着た………見慣れぬ少年が座っていた。
「………は?」
あまりの驚きに間抜けな声しか出ない。
鬼男は我に返ると急いでドアを閉めた。
そして頭をフル回転させる。
(だだだ誰だ今の!?オレの見間違いでなければ、今、大王の机に大王の格好した5歳くらいの子どもがいた気が……っ)
しかも、外ハネの黒髪に白い肌、顔付きが閻魔そっくりだ。
「まさか隠し子!?」
恐る恐るドアを開けると、そこには確かに子どもがいた。
「あのー…僕、そんな所で何してるのかな?」
「ん?」
子ども特有の高い声。
パチパチと目を瞬く少年を見て、鬼男は頭がクラッとした。
――違う。
確かに似てるけど、こんな可愛い子があんなイカの息子なわけがない。
「僕、何処から来たのかな?パパとママは?」
子どもの視線に合わせて屈み、引きつる笑顔で訊くと、少年は大層かわいらしげな仕草でコテンと首を傾げ、言ったのだ。
「なに言ってるの、鬼男くん?おれはずっと昔からここの王様でしょ?」
「大王だったーーーーー!!?」
鬼男は慌てて小さな閻魔を抱き上げ、全身を眺めるように天井に掲げる。
「どうしたって言うんですか大王!!なんでそんな面白いことになってんですか!?」
「ちょ、たかい!おろせ!おろせ!」
「嫌です、理由を言いなさい!」
「厳しいなキミ!」
まだ幼いためか、上手く呂律の回らないふにゃふにゃした声で閻魔は「うー…うー…」と唸った。
鬼男の胸がキュンと鳴り、力が抜けて腕がガクンと下がると閻魔が「ぎゃーごめんなさい!あやまるからすぐに下ろさんといてー!」と、やっぱり可愛い声で半泣きになって言った。
_