OTHERSHORT

□輪廻の果て
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閻魔は永遠に閻魔。

けれど鬼はいつしか生まれ変わらなければいけなかった。


透き通る身体に、鬼男は鬼としての死を悟った。

何処を見ても死だらけの冥界で、死を恐れることはなかった。

透き通る足元は肌を見せないように隠して、いつも通りに過ごしていた。

けれどみるみるうちに今までは出来たことが出来なくなっていく。

動けなくなっていく。

足、腰、腹、胸、肩まで薄く透けていく身体。

それが腕や首に到達する頃には、鬼男は歩けなくなっていた。

閻魔が気付かないわけもなく、閻魔は今、鬼男が横たわる寝台の横に寄り添っていた。


分かっていたことだった。

鬼は不死身ではない。

鬼男もいつかはいなくなってしまうことを分かっていた。


「………鬼男くん、ずっと俺のそばにいてくれるって言ったのに」

「………すみません。僕だって死にたくないんです。貴方一人のために、こんなに…」


泣くように小さく呟いた閻魔の白く細い手を握る。


「鬼も不死身だったら良かったんですけどね……大王、ごめんなさい」

「でも、俺のために生きてくれたよね…。怒ってないよ。俺は幸せだ」


もうすぐだ。

もうすぐで、命が終わる。


閻魔は微笑んだ。


「鬼男くん、最後に一つだけ、俺のお願い」


鬼男の透き通る両手を取り、虚ろな両目を正面から見つめる。


「俺のお願い、聞いてくれるよな…?」

「何ですか…?」


鬼男はそっと微笑んで閻魔の髪を撫でながら訊き返した。

何だって聞いてあげる。

死ぬ直前の無力なこの身体でも、出来る事なら何だってしてあげる。


「言って下さい、大王。僕に出来る事は何ですか…?」


閻魔の細い体が鬼男の透き通る身体に重なる。

閻魔の唇から紡がれた“命令(おねがい)”を、鬼男は静かに微笑んで聞き入れた。










他の鬼が数人、その寝室に駆け込んで目を瞠った。

真黒な寝台に真紅の飾りが垂れる。

その美しく残酷な様に鬼達が喘ぎながら鋭く叫んだ。


「お前………何てことを!」

「鬼がこんな事をして許されると思っているのか!?」


息絶えそうな身体に崩れ落ちた絶対的な存在。

冥界の王を愛した鬼は爪を伸ばした手を真っ赤に染めて微笑んでいた。


「やってくれたな、この、本物の鬼め…!!」


その叱責にも構わずに、鬼男は鬼の吊り目を細めて微笑んだ。


「大王の言葉が僕のすべてだから。大王に従うことが僕の幸せだから…」


嗚呼――僕、死にます。

貴方の亡骸を抱いて、貴方の血に抱かれて、終わりを迎えます――。


輪廻から外れた貴方。

王を殺し、きっと輪廻に見捨てられたであろう僕。

貴方と僕、二人っきりで、六道輪廻の彼方を漂いましょう。

貴方と一緒なら、僕は何処でも構わない。

貴方の傍にいると約束したから、僕は絶対に貴方を離さない。



鬼男はもうほとんど見えなくなってしまった手で、しっかりと閻魔の亡骸を抱きしめて事切れた。





『ねえ、鬼男くん

嘘を吐いてはいけないよ

どうしても駄目なら俺が誠に変えるから

約束は守りなさい

何をしてでも守りなさい』





――ねえ、鬼男くん

ずっと俺のそばにいて

君がそばにいられないなら俺がついていくから

俺を置いてかないで

俺のことも一緒に殺して――





嗚呼、これで、ずっと一緒。







*了*





アトガキ





太妹連載と言い、前回の蕎麦と言い、毎回毎回ひどいなwwwwwww

すみません、ギャグマンガなのに何てことをやってるんだ私は…。

でも真ん中辺りのあむぁ〜いパートを書くの、楽しかったです。

鬼男の純情!!
貴方が好きだ!!(何を言ってるwwww)

鬼男は男前で好きです。
妹子といい勝負だと思う…笑

今回は鬼閻を書きましたが、閻鬼もイケる口です(*´∀`*)b笑
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