OTHERSHORT

□穢れなき愛を捧ぐ
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「は……あっ…ん……」


グチュグチュと肉を抉るようなグロテスクな音に、甘く掠れた妖艶な声が混ざり合って響く。

その和室の中は死体の匂いと精液の匂い、それと花の匂いがいっぱいに立ち込めたカオス空間だった。

枯れた花、枯れかけた花、まだ瑞々しい花。

切り花が畳の上にばらまかれている中、白い敷き布の上に横たわる一つの死体。

ソレを掻き抱き、腰を寄せ、恍惚とした表情で快感を貪っている若い男。

ハッと息を飲むほどの色男なのに、その表情は狂気に満ち、病的だった。


愛の営みの最中、恋人に語りかけるように曽良は呟く。


「気持ちイイですか、芭蕉さん…?…いつも優しくしてって言いますけど、貴方は酷くされた方がイイみたいなんで」


でも、と曽良は苦笑に似た表情を向ける。


「そんなんで泣かしてばかりだったんで、少しだけ加減します…。ね?気持ちイイでしょう」


筋肉の緩みきった虚しい洞穴に張り詰めた雄を突き刺し、律動を繰り返す。


「他の誰よりも僕のが気持ちイイでしょう?巧くて優しくて、貴方の被虐思考にもついていける……相性抜群じゃないですか」


はぁ、と熱のこもった息を吐き出し、柔らかさの失われたゴムのような唇にかぶりつく。

自分の熱が移り、死体にも熱を感じられると急に興奮した。

舌を入れ、縮こまって乾ききった芭蕉のソレを絡めとると、接吻のやりづらさに顔を顰めながらも夢中で貪る。


「っは……。…芭蕉さん、接吻、好きでしたよね…。僕にされるの好きだって。…ココ、芭蕉さんの一番イイところですよね?ココを突くと思いっきり締め付けて…」


耳元で囁き、芭蕉の性感帯ばかりを攻める。

曽良は たまらなくなって小さく笑った。

「かわいい人だ……こんなに放っておけないモノは、見たことがない…」


ずっと構っていたい。

座っている自分。

寄ってきて甘えるように抱きつき、愛を乞う動物。

寂しがりやだったが、過剰な触れ合いは好まない男だった。

恥ずかしいのか、無駄に誇りが高かったのか、そういう性質だったのか。

しかし そんな彼が自分にだけは、ほんのたまにだが愛情をさらけ出してくれる。

その瞬間がたまらなく好きだった。


――曽良くん

――曽良くん


名前を呼んでは縋るばかりで、欲望を口には出せず、目で強請る男だった。

それだけで充分だった。


「全く……芭蕉さんは仕方のない人ですね…」


何処にも行かないで欲しいんですか?

そばにいて欲しいんですよね?

ああ、抱きしめられたいんですか。

接吻?いいですよ。

分かりました、添い寝してあげます。

僕の身体、欲しいですか?

たまには優しい言葉も欲しいんですね。


全部、全部、分かってます。

全てを素直に聞いてやったわけではないけど、でもたまには褒美をあげました。

分かってるんですよ。

芭蕉さんの欲しいもの、して欲しいこと、全て。


可愛い芭蕉さん。

貴方の目や耳、五感、思考とか、貴方が僕以外を向くことが許せません。

その研ぎ澄まされた命は僕だけを感じていればいい。

長く生きて色んなものを詰め込んだ貴方のその命。

美や醜、希望や絶望、この世にある ありとあらゆるものが凝縮されて存在する貴方。

懸命に生きた命。

なんて可愛いんだろう。

貴方そのものが芸術だ。

美を超越した傑作だ。

死してなお輝いている。


嗚呼、愛しい。


「芭蕉さん。芭蕉さん、…芭蕉さん、ああ…芭蕉さん、芭蕉さん、芭蕉さん……!!」


死体を相手にしたところで身体的な快楽は大して得ていないはずの曽良は、その精神の限りない興奮で絶頂を手にする。


「っあ……はぁ…!」


ドク、と溢れ出す白濁を流し込み、曽良は芭蕉だったモノをギュッと抱き締める。



「愛してます……芭蕉さん」



この上ない幸せの笑みを浮かべて囁いた青年は、自身を抜くと、死体の乱れた着物をそっと剥いでいった。


「そろそろ腐るんです。芭蕉さん…勿体ないんで」


伸びきった爪を死体の肌に宛てがった。


「僕が食べます」



それはどんな甘味よりも甘く、どんな高級品よりも気高く、どんな食卓よりも幸せな食事だった。





*了*




アトガキ




わーい初めて日和BL小説をうpしたぞ!

わーい何故かいきなり死ネタで狂愛でグロテスクでR指定だぞ!

わーい!



orz




氷城が夜中の4時に小説を書くとこうなります(笑)。

これが本当のクレイジーですね。

長編を読めば妹子が狂ってるわ短編を読めば曽良が狂ってるわ、このサイトは日和を一体何だと思ってるんだって感じです!笑

すみません、元がギャグなのでどうしてもこういうのに持って行きたくなるんです。

そして原作が暗いと二次創作ではライトな感じにしたくなるという捻くれ者ですね(笑)。

こんな感じでこれからも色々書いていきたいと思います^^

………え?
芭蕉さんが全然しゃべってない?

ばっかやろ!
別に芭蕉さんの口調が個性的すぎて分かんねえとかそんなんじゃ全然ないんですからね!←
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