OTHERSHORT
□悪夢のあとの甘い夢
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「っはぁ…はぁ…は…!」
まだ真夜中だった。
身体は汗だらけ、頬は涙だらけ、シーツはグシャグシャ、寝覚めは最悪。
「…っ夢…」
ダンテが殺される夢を見た。
あのリアルさ。
まだ手が震えている。
「ダンテ…っ」
シーツを握りしめて項垂れた。
…その時だった。
――ガシャアァン!!
「!!?」
部屋の窓ガラスが豪快に割れて何かが飛び込んできた。
月光を受けてキラキラと輝くガラスの破片を浴びながら部屋の真ん中に着地した人物――夢で見た彼その人だった。
「…ダンテ…」
呆然と呟いたいろはに、ダンテは目を丸くして振り向いた。
てっきり、窓ガラスを割ったことを怒鳴られると思っていたからだ。
しかし予想に反していろはは何も言わない。
「どうした、刺激が強すぎる登場だったか?」
そんなふうにおどけてみせるダンテを呆然と見つめていると、彼の頬に切り傷を見つけた。
今の窓ガラスのせいだろう、ピッと横線が入ってわずかに血が滲んでいる。
そんなわずかな傷に、いろはは身体の奥底から恐怖が沸き上がるのを感じた。
「――ッ馬鹿!何してるの、こんな真夜中に!家で大人しくしてたらどう!?
ガラスを突き破るなんてどうかしてるよ…怪我するぐらいならそんなことしないで!!」
「怪我?」
「頬だよ――残念、そっちじゃなくて右の方!」
ダンテは左頬を触ってから右頬に触れ、指に付いた血を見る。
「Shit.ちょっとしくじったな。登場シーンが台無しだぜ」
「そんなの期待してない」
「それはそれは…甘く見られたな。覚悟してろよ、次は――」
「次なんか無い」
「…あん?」
いつにも増してノリの悪いいろはにダンテが眉を潜めて立ち竦む。
「いろは?」
いい加減に異変に気付いたダンテがベッドに近寄るが、いろははすぐに手で制した。
「ダンテ…突然で悪いけど、私、ダンテと縁切るね…?」