OTHERSHORT
□行きすぎた優しさ
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教団に入ってすぐのこと。
キリエさんに連れられて教団内を歩いていた時だ。
「これで一階は全部回ったわね。いろは、次は二階を案内するわ」
「はい、キリエさん!」
キリエさんの優しい微笑みに頷きを返して、ふと振り向いた。
(…わあ…)
廊下の角を曲がって歩いてきた青年がいて、その容姿に思わず固まった。
美しい銀髪に、その下の端正な顔立ち。
スラリとしたバランスの良い身体に翻るロングコート。
一言で言ってしまえば、カッコいい。
しかしヘッドホンをして両手をポケットに突っ込み、しかめっ面で歩いている辺り、キツい性格なのだろうと一目で分かった。
いい加減に踵を返そうとした時、偶然にも青年と目が合った。
青年は目を丸くしていろはを見、そしてその隣を見た。
「キリエ、彼女は?」
「あら、ネロ!」
キリエは青年に気付くと親しげに微笑んで名前を呼んだ。
「彼女はいろは、新しい教団の一員よ」
ヘッドホンを外して首にかけたネロはいろはを見る。
そして、先程の表情とは一変して、柔らかい笑みを浮かべた。
「俺はネロ。こう見えて教団員生活は長いからな、何かあったら訊いてくれよ」
「あっ……ありがとう!」
なんだ、優しい人じゃないか!
私は安心して微笑み、その笑顔を見てネロも一層笑みを深くした。
カッコいいし強いし優しいしで、なんか、もしもネロと…つまり、えぇっと…その……恋人?みたいなのになれたらなぁ…ってそりゃないか!ないよね!あは、あはははは…!
…とか、昔はそんなことを思ってドキドキしてみたりもした。
今の私から一言、言わせてもらう。
正気の沙汰じゃねえよ!!
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