中・長編

□月姫:3
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フレンを押し退けて、城の中を走り抜ける。
エステルの部屋は何度か訪れた事がある。
その部屋のドアを開け放って駆け込む。

「…エステ……ッ」

目に入ったのは。
泣きじゃくる少女と、それを抱き締める男。
ベッドの四隅に浮かんだ精霊と、
それらと何やら話しているリタ。
それから…、
ベッドの中心辺りに浮いているのは、
あれは見た事がある。
「聖核…?」
何だって聖核がこんな所に?
聖核も魔核も精霊化を果たした筈だ。
見れば何か反応している。
「ユーリ!」
フレンが走り込んで来て、俺の肩を掴む。
その声と勢いで、部屋にいたヤツらも俺に気付いた様だった。
「ユーリ…?」
泣いてたのはパティ、
抱いてたのはヨーデルか。
「なあ…フレン、」
「済まないリタ、精霊達も。調整の邪魔に、」
「今更なる様なもんでも無いわ」
フレンの言葉を遮り、
リタが素っ気なく言う。
「なあ。フレンあれは何だ?」
「それに、」
俺の言葉が聞こえていない素振りで、
リタは続ける。
「もう終わりよ」
柔らかな光に包まれる。
目を細めると、
聞こえて来たのは精霊達の声。
「おお…!」
「新たな精霊の誕生です」
「…わらわ達精霊を統括する、
光の精霊じゃ!」
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