すぺしゃるめにゅう【捧げ物】

□春来たる
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とは言え、
いつまでもそのままじゃいられない。

そろそろ、か。
目をまん丸にしてるエステルに話を振る。
「それ、キレイに出来てきたな」
「ふぇ、あ、はい!」
エステルが慌てて手を動かす。
俺は隠しておいた(紛れ込ませたとも言う)ものを取り出し、彼女の傍らへ。
まだ背中に隠しておく。
「結構大変ですけど、でも楽しいです!」
細い指が繊細に動く。
「お花の意味も考えないといけませんし」
「…意味って、何かあんのか」
知らない振りで問い掛けると、
エステルは嬉しそうに話し始める。
「花にはそれぞれ、花言葉というものが添えられているんです」
手元の花をそっと手に取りながら。
「アイリスは『あなたを大切にします』」
柔らかな声が紡ぎ出す。
「複数の意味を持つ物もあります。
アネモネの花言葉は『期待』や『あなたを愛します』といった物ですが、
『儚い恋』という物もあるんです」
そういう時は良い方が使われるんですよ。
ふわりと微笑んで。
「フリージアは『親愛』、
マーガレットは『愛の誠実』。
ブルースターのおまじないは、
『信じる心』で以て『幸福な愛』を呼び込みます。
ガーベラの『神秘』には、
霞草の『清い心』と『切なる喜び』を添えて」
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