すぺしゃるめにゅう【捧げ物】

□春来たる
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まだ春だってのに熱気の籠もった夜。
帝国もダングレストも湧きに湧いてる。
…の割に静かなのは、嵐の前の静けさっつうか(使い方違うかも知んねえけど)、
まあそんなとこだろう。
何せ明日は…。

「とうとう明日だよね!
いいなぁ楽しみだなぁ、
ヨーデル陛下カッコいいんだろうなぁ!」
はしゃぐカロルの頭に拳骨が落ちる。
「無駄口叩いてる暇があんなら、
手動かしなさいよ!」
やってるよー!という、
カロルの文句は黙殺らしい。
「…ったく、何っであたしがこんな事」
「文句言わないの、
手伝ってくれるんでしょう?」
笑いながら窘めるのはジュディ。
いつもならここらでリタをからかい始めるおっさんは、
今は式場となる城内の警備で居ない。
只今俺達『凛々の明星』は、
式場の花飾り制作の仕事中。
ジュディがバウルに乗って各地から集めて来た花々は、かなりレアな花もあるらしい。
運び込まれたエステルの部屋は、
花屋も開けそうな程だ。
「でも、ヨーデルがこんなに早く結婚してしまうなんて、思わなかったです」
何にも聞いてない…なんて言って、
未だに拗ねてるのは俺の恋人(だよな?)。
彼女は花嫁のブーケを作っている。
色とりどりの花と、
その香りに埋もれながら。
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