すぺしゃるめにゅう【捧げ物】

□猫の日《若き騎士団長様の場合》
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中心の“飴”以外は。
フレンはエステルが猫になった経緯を知っている。
流石に飴をそのまま出したのでは警戒されるかと、形を変えさせて貰った。
(仕掛けるなら、これ位しないとね)
「ジュディス、何かあったのかい?」
「何故かしら?」
「何だか楽しそうだから」
「あら。…そうね、とっても楽しみなの♪」
「?」
首を傾げてクッキーをかじるフレンを眺めるジュディスは、喜びが隠し切れない様子だった。

「それじゃ、部下達が待っているから」
お茶とお菓子をありがとう。
そう言って、フレンは街の外に張られたテントに帰って行った。
「おかしいわ…」
量が足りなかったのだろうか?
それとも手を加えたから?
「もしかしたら、リタの薬じゃなかった…とか?」
可能性は高そうだ。
だとしたら謀は最初から失敗だが。
「………、つまらないわ」
残りの飴玉を袋ごと荷物の中に押し込んだところで、背後から声が掛かった。
「何がつまんないんだ?」
「あら、お早う。お粥温めるわね、エステルの分だけ」
「だけなのかよ」
立っていたのはユーリだ。エステルを姫抱きにしている。
「お早うございま…、けほっけほ…、」
「ほら喋んなって」
椅子に座らせてやってはいるが、声が涸れているのに背中をさすってどうするのだろう。
「元凶が何を言ってるのかしら?」
エステルの前に温めておいたミルクを置いて、ジュディスは突っ込みを入れる。
「お礼はいらないわ、お腹空いてるでしょう?少し待っていてね」
それからは、いつも通りの日常だった。


『さて、後は日誌を書けば終わりか』
ばさっ、サラサラサラサ…。
『…ん?あ、あれ…、クラクラ…。何…』
ぱちんっ!
『……………なぁう!?』


カリカリカリカリカリ…。
窓枠を何かが引っ掻く音がする。
「ん…、何?こんな夜中に」
眠っていたものの直ぐに目を覚まし、窓に歩み寄ってカーテンを開ける。
「…………」
明るい金茶の毛並みに、青空を切り取った様な瞳の、大きな猫。
「猫?」
妙に見覚えのある…。
そこまで考えた所で、ジュディスの頭に今朝の出来事が蘇る。
慌てて窓を開けると、飛び込んで来た猫が話し出す。
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