短編

□悲鳴ひとつを奪われた
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ぼろ布の様なその有り様は、
視覚に殊更哀れを訴えた。

「……どうして、
 こんな事が平気で出来るの?
 どうして、平気で出来る人がいるの?
 何故……」

そこで言葉を詰まらせた少女は、
手脚を縛られた“それ”を掬い上げて、
両の腕に抱き止める。

その少女を更に抱くのは、
彼女を何より大切に想う少女。

こちらは同じ様に悲しむ事は出来ず、
憤りに身を震わせている。

「コレだから…、人間が嫌いなのよ!
 魔物よりよっぽど悪辣なクセして、
 口先だけは綺麗事並べて!!」

誰一人、それは違うとは言えなかった。
ここにいる者は例外なく、
人間の醜さを良く知っているから。

………だから。

「埋めてやろうぜ、街の外に」

「そうね。大地に帰してあげなきゃ」

男には少女の手から“ぼろ布の様な塊”を引き取る他言える言葉はなく、女は少女達を抱き締める他は出来なかった。



『子猫は鳴き声一つを奪われた』



男と女には見えた気がした
抵抗する心さえ縛られて
鳴き声一つを踏みにじられた
在りし日の少女達の姿が

 
 
 

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