すぺしゃるめにゅう【捧げ物】

□猫の日《若き騎士団長様の場合》
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「あら?これ、確か…」
それは、“エステル元に戻れて良かったね、
これからは気を付けなきゃ駄目だよパーティー(長)”の開かれた夜の事。

ユーリがエステルを攫って早々と部屋の奥に引っ込んだ事で、“エステル元に(ry”がお開きになり、ジュディスはレイヴンと後片付けをしていた。
そこで見つけた小さな袋。
中身は見覚えのある包み紙、小さな飴玉。
幾つか入っているが、酷似しているのでは無かろうか。
リタが『今度こそ…』とか、『見てらっしゃい!』とか言っていたのを思い出す。
まさかとは思う。
まさかとは思うが、これは…。
「ジュディスちゃーん、お皿まだー?」
とっさにその袋を隠し、レイヴンに返事を返す。
「今持って行くわ」
ちょっとわくわくする計画が頭に浮かび、
久々に表情を抑えるのに必死なジュディスだった…。


【若き騎士団長様の場合】



「お早う、ジュディス」
「あら早いのね、お早うフレン」
と言っても、みんなが朝食をとった後だ。
この騎士団長様は朝が早い。
朝の鍛錬も既に終わらせた後だろう。
『生真面目が服着て歩いてる』とは彼の親友の言だ。

「それじゃ、エステリーゼ様は無事元に戻られたんだね」
ほっと安堵の息を吐くフレン。
だが…。
「アレを果たして無事と言えるのかしら…?」
そこのところは、少し悩んでしまう。
現に今朝も、エステルはまだ起きて来ていないのだし。
ユーリは今朝方、水を取りに来た。
いやに元気いっぱいで。
エステルには同情を禁じ得ない。
「どういう事だい…、まさかユーリ!」
立ち上がったフレンを宥めて座らせ、ジュディスはクッキーを置いてやる。
「恋人達の睦事を邪魔するなんて、無粋にも程があるわよ?
甘い物でも食べて落ち着きなさいな」
「…ありがとう」
フレンは溜め息混じりに微笑んだ。

型で抜いた中心にパリパリとした飴の入ったそれは、どこにでもある極々普通のクッキーだ。
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