中・長編

□月姫:2
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「ええ、他にいないわよ。
もう三つになるのに泣き虫さんなの。
男の子なのにね?」
「ジュディ顔色悪いぞ、
疲れてんじゃないのか?」
「………あの子よりマシよ」
ジュディの目線を辿った先には、
ローブのフードを目深に被った人間。
「………」
ソイツは黙ったまま通り過ぎようとする、
こっちを見もせずに。
「?、誰…、」
「リタ!」
…なんだと訊こうとした俺の声を遮って、
フレンが叫んだ。
……リタだって?
この、全部を拒絶してるみたいな雰囲気のヤツが?
ジュディとフレンが、
何か話し掛けてる。
その時初めて、
ローブの奥から視線が向けられた。
「…あたし、戻るから」
けど直ぐに視線を外して、
先に進もうとする。
「待てよリタ、お前、」
思わず駆け寄って、
肩を掴んだ拍子にフードがずり落ちる。
その下から現れたのは、
目の下にデカい隅を作った酷い顔。
掴んだ肩の感触も、骨が浮いてる様な。
「…離しなさい、死にたくないなら」
あたしもあの子を泣かせたくはない。
敵意さえ無いのにギラつく目。
嗄れた声で呟いて、
手を振り払って立ち去った。
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