その瞳にひかりを
□第四話−害の間−
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「私」が初めて生まれたとき。
そこは、霧の濃い林の中でした。
私の前に赤い鳥居がたっていて、私の後ろには鳥居と同じ色をした小さな社がありました。
私は、そのときはまだ三歳にも満たない幼児で、社の中に光るなにかがあるのを気にも止めず、それよりももっと不思議なモノ達に興味を抱きました。
たくさんいるのに、どの人にも足がなく、どことなく透けていて、宙に浮いているんです。
それは……それらは、ちょこんと座り込んでいる私の周りをぐるりと囲んで、私に微笑みを向けました。
それらは言いました。自分たちは「幽霊」という存在だと。
そして私が「妖怪」という存在だと。
私は彼らの言っていることがわかりませんでした。なんせ、年端もいかない子どもだったから。
でも、それら――幽霊たちが嘘をついているようには思えませんでした。なぜかはわかりません。でも、そう思ったんです。
今考えると、たぶんそれは子どもなりに何かを感じ取ったんだと思います。
そして幽霊たちは多くは語らず、私の手を引いて歩き出しました。
幼い私は彼らに尋ねました。
「どこにいくの?」
すると彼らは私のほうを見て言いました。出雲に行くんだよ、と。
また、私は尋ねました。
「『いずも』ってなに?」
彼らは、土地の名前だと答えました。
「『とち』ってなに?」
彼らは、今から行く場所のこと、それから今私が踏みしめている地面のことだと答えました。
それをきいた私は、自分が歩んでいる地面を見下ろして、同じ場所を何度も踏んだり、飛び跳ねたりしました。
「ねえ、ゆうれいさん。どうしていずもにいくの?」
彼らはこう答えました。
「そこに、君を守ってくれるものがあるから」
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