その瞳にひかりを

□第三話−刻の間−
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***


光に包まれたあとは、記憶がない。

ただ、いつの間にか、真っ暗な空間にひとり、立っているだけだった。

何もない「無」の空間。

歩いてみても先がない。先すら見えない。道すらない。

本当に、なにもない。

ここはどこだ?――わからない。

自分は今、どこにいる?――わからない。

どこに立っている?――わからない。

どこを歩いている?――わからない。

私は、誰だ?――……わからない……。

自分のことがわからない。自分が誰なのかわからない。自分が生きているのか死んでいるのかわからない。自分の存在がわからない。

存在とはなんだ?

生死とはなんだ?

自分とはなんだ?

なにも……わからない。

こわい、怖い、恐い、コワイ。

わからないことがこわい。

なにもないことがこわい。

じぶんが…こわい。

助けて、誰か助けて。

誰でもいいから、助けて。


ここから、出して――


***




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