その瞳にひかりを

□第二話−陰陽の間−
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***

「力が欲しくはありませんか?」

突然現れ、女は言った。

「ちから?」

「はい」

笠に隠れた目を細め、女は答えた。

「力など、とおに持っておるわ」

「それは、秘宝を護るための物でしょう。私が言っているのは、そのような物ではありません」

「ならば、何だと言うのだ」

「善妖ともあろう狐が、この程度を判らないとは…」

呆れた様子の女は息を吐く。

「ほざくな。たかが数十年しか生きられぬ人間が、大層な口をきくでない」

「人の命は、短いとでも?」

「他に何が言える」

「たとえ短くとも、その間に得られることは、妖怪には判らぬことです」

その時、笠から現れた女の瞳は、彼女の着ている仏教僧侶の袈裟と同じ紫紺色をしていた。

「私が言った力とは、今の貴方にはない物」

きん!と、女は片手の錫杖を鳴らし、もう片方の手をこちらに突き出す。

「命(ひと)を護る物です」

その瞬間、俺の体は光に包まれた。

***






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