夢小説


□甘い魔法。
1ページ/2ページ

オリジナル要素あり。
















カランコロン。
誰かが酒場に入った音。

「帰ったぞ」

賑やかな酒場ではその声は掻き消されてしまったが、一人だけに聞こえていた。

「おっかえりなさぁぁーーーい!!!」

エルザがクォークと出会った時には彼女はすでにクォークの後ろにくっついていた。

あの時は兄弟かと思ったが、今では…

「お父さんと娘って…感じだよね」

思わず零れた言葉はクォークと彼女以外、皆を頷かせた。


「すまんが今日は作る時間がなかったから買ってきたぞ。」

クォークが申し訳なさそうに手にもっていた袋を彼女の目の前に差し出した。

匂いで甘い物だと分かったとたん、彼女は目が光り受け取った袋とクォークの手をにぎりしめテーブルへ走りだす。


それを見ながらユーリスが呟いた。

「確かクォークって甘い物苦手なのになんで作ったりするんだろうね」

そう。クォークは毎日彼女のために苦手な甘い物を3時までにきっちり作るのだ。

これはエルザが出会った時もそうだった。
確か出会った記念に半分もらったが、
味は普通においしかったのを覚えている。

だが今日は用事があり朝からクォークは外出。作る時間がなく、彼女のために甘ったるいお店に入り買ったのだろう。

何故それほど我慢してまで彼女に尽くすのか。

袋を開けて中身を見た瞬間にはじける笑顔
それをみて微笑むクォーク。

…うん、親子。


中身はケーキのようだ。
とりだして早速食べていた。

もちろんお皿やフォークはクォークが準備。

頬張る彼女の頬にクリームがついてると怒りながら拭い、彼女は拭った手についたクリームを舐めた。


「熱っ…」

セイレンがノンケに戻るほどのいちゃつき、なのに何故か恋人より親子。


「どうした。」

ふと見ると、クォークが彼女に疑問を抱いていた。

彼女は口いっぱいにケーキをつめこんでいるがなぜか不思議そうな顔をしていた。

おいしくなかったのか
クォークが言うと首を横に振る。

ケーキを飲み込み、彼女は言った


「おいしいけど…何ががたりない…」


満たされないらしい。
フォークを噛みながら何がたりないかを探している。

「何か…ねぇ」

クォークも考えている。
でもなんだか様子がおかしい…

何かがたりないと言いながらも彼女は食べ続けた。


結局おいしかったのか。


解決せずに次の日へ。
その日はクォークは外へ出ずに剣を磨いていた。

昨日の様子がおかしかったのを聞こうとクォークの方へエルザは向かった。

だが気がつけばクォークがいない。
時計を見ればまだ1時。
…まさか。

ふとキッチンを見ると

「借りるぞ」

「えぇ、どうぞ!」

エプロンを身につけたクォークがアリエルと交代していた。

生クリームもちゃんと一から泡立てたり、
生地も延ばしたりなんか、すごい。

酒場のキッチンにお菓子を作る機具があるのが驚きだが、クォークの技術にもびっくりする。

嫌々な顔にも。

「クォークはどうしてそんなに手作りにこだわるの?」

クォークはめったに買わない。
そっちのほうが味や形は綺麗な気がするのだが…

「エルザ、分かってないな。」

ふっ…、と笑われた。
なんだか子供だと言われた気分



「これはただの餌にすぎんさ。」



思いもよらない言葉が聞こえた

「え、餌…?」

「あぁ。」

今は、な。

なんて意味不明な言葉を残して。

カランコロン。

「帰ったか。ちょうど出来たぞ。」

「ただいまっ!!今日は何ですか!?」


今日はシュークリームらしい。
クォーク…すごいな。

汚れたままシュークリームを食べる。
クォークはニコニコして感想を待っているようだ。


「…っ!!!おいしーーい!!」

「当たり前だ。」


昨日とは大違いの反応。
やはりクォークの作ったお菓子の方がおいしかったのか。

「ふむ、昨日のは有名なパティシエから取り寄せたケーキだったんだがな。」

「おいしかったよ!!」

「だが満たされなかったんだろ?」

ふふん、と勝ち誇ったようにクォークが続ける。

「…知りたいか?」

なんて。
なんだ、クォークはやっぱり何か知っているをだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ