夢小説


□死ヲ分カチ合ウ
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「最後まで…俺の我が儘ばっかりですまない。」

「俺はお前を…」

「俺はお前達を…」




動かない体。

呼吸も満足に出来ない。

意識は朦朧。


そんな俺をエルザは涙ぐみながら見て、そして行った。

大丈夫。お前には仲間がいる。
俺がいなくても大丈夫だろ?

ここもすぐ崩れる。

あぁ、瞼が重い…














「わけないだろうが。」


アルガナンの力に異邦のものの力を手に入れていたんだ。
エルザの一撃で倒れるわけがない。

だが、これでいい。

俺はもういらないから。
そう、俺の役目は終わったんだから。

くずれるまで時間はある。
…アイツも逃げただろうか。

「ふっ、俺がいなくなったらアイツはどうやって生きるんだろうな。」

すこし興味が出てきた。
守護霊として後ろから見守ってやろう。


「ばか言わないでよ、」

「死んだりしないよな…」

「死ぬ前にまず貴方ぶっとばすかな。」

「ありえそうだな……ん?」


俺は幻を見るほど重傷だったか…?
まぁ確かに斬られたけど…


「ねぇ、なんで貴方の帰りを酒場で待ってた私がここにいると思う?」

幻はしゃがみこんで俺に問い掛けてきた。

俺は…それほどお前を…

「そうだな…俺がお前を求めているんじゃないか?」

なんて答えたら俺の大好きな笑顔。
ずいぶんリアルな幻だな。

触れそうだ。

「ふふっ嬉しいこと言ってくれるね。」

ふわりと彼女の匂いと一緒に俺の頬に彼女の手が。

まさか、本当に…








ぱしん








俺を現実に戻すように彼女が頬を叩いた。


なんで

ここにいる

「貴方が私を求めたんでしょ?」

どうやって来た

「エルザの後ろにずっといたの。」

弱いお前が無傷でよくいられたな

「誰かさんが守ってくれたから。」

…俺が?

「赤い光。貴方の気配を感じたよ?」

そうか…なんだ無意識に俺はお前を待ってたのか。

「約束ちゃんと守ってよね。」

顔を歪めながら手を見せる。
まだ、昔に俺があげた指輪を持ってたのか

俺も持ってるよ。
ネックレスにして、大事に。

「何があってもお前を守ってみせる。」

そんな約束もしたな。
確かお前の誕生日に言ったんだったな。

「だから…俺から離れるな。」

…独占欲強いな。俺。

「言った貴方がなーに約束破ってるのよ」

つん、とおでこを突かれた。
和ましい感じに見えるが

俺は血まみれ

背景は崩れる建物

お前を死なせるわけにはいかない…


そう言いたいのに彼女の唇が俺の唇にかみついた。

「なんで私が一人でいるのか分かってよ」


雨が降ったのかと思った。

彼女の顔はびしょびしょ。


拭ってやりたい。
なのに手が動かない
血が抜けすぎたな…

「まだあったかい…」

俺の上に跨がり、彼女は心音を確かめるために胸に頭を置いた。

「ねぇ、クォーク」

死なせたくない。
なのに離したくない。

精一杯の力を出し、彼女の背中に腕を回した。

「…眠たいね」

あぁ、なんだか安心する
彼女の心音が心地よい

「また次も一緒にいようね」

カナンが口ずさんでいた歌。
それが聞こえる。

「今度は二人で武器屋とかしようね」

なんだが俺も眠たくなってきた。
一寝入りだけ、

「それで…それで、エルザ達はみんなお気に入りのお客様。」

起きたら二人でどこかへ旅しよう。
まだ知らない場所を探して。

「平和になろう。みんなで。」

もう崩壊が進んでここも危ない

だが安心する。

「そういえばクォークと一緒に眠るの久しぶり。」

「忙しかったからなぁ…」

「でもこれからはのんびりできるね」

「あぁ。二人で静かに暮らそう。」

「…嬉しい。」

「…俺もだ。」


徐々に重くなる瞼

体は軽くなり

BGMはカナンの歌



あぁ、なんだか幸せだな。


(お墓はもちろん二人で一つ)

(ずっと一緒)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

クォーク…まじっ…すきっ…!!

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