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□とあるドラッグストア店員の憂鬱
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夜中のドラッグストアはあまり客足がない。この時間帯のレジ当番など暇すぎて仕事がなく、高い給料をもらうのも少しばかり躊躇われる程だ。

まさにそんなレジ当番の俺は、時折来る客の相手をしつつカゴの中身を観察して暇を凌いでいた。
週末ということもあり、宅飲みする人が多いのだろう。酒でカゴを重くして会計に来る客が殆どだ。
むしろ一杯引っかけてきたようなオヤジが隣のレジでバイト仲間に絡んでいる。頑張れ!

「あ、お客様、こちらのレジへどうぞ!」

その酔っ払いオヤジの後ろに並んだ2人組を呼ぶ。緩やかなカラオケ音楽が流れる店内に、俺の声は意外に大きく響いた。

「いらっしゃいませ。お品物お預かり致します」

てかこの2人、すごく目立つ。
銀髪って!なに不良なの?でもそれがまた綺麗で気怠げで、なんだか色っぽい。むしろ隣のお兄さんの方が怖い。瞳孔開いてるし眉間にシワが!何俺なんかした?!

「あ、忘れもんした」

「あ゛ぁ?!てめぇ人の金でまだ買う気かよ!」

「いーじゃんいーじゃん。……お前も使うやつだから」

どうやら黒髪の方が代金を払うようで、それでイラついていたらしい。酒とつまみと大量の甘い系のお菓子に、パンツと歯ブラシセットが1つずつ。週末に男2人で宅飲みでお泊まりなんて、顔はいいのに俺らと同じか。
銀髪は「お兄さんちょっと待ってて」と言うとまた店内に戻って行った。

あらかた袋詰めも終わり、商品が来るのを待っていると、銀髪が戻ってきた。
アレでも、そっちの方向って……

「……ほら、大事だろ?」

コトンと音を立てて置かれたのはコンドームだった。ジェル付き&匂い付き。しかも3箱パックのお得用。
銀髪は目を細めて妖艶に微笑むと、黒髪を見つめて絡むようにしな垂れかかる。
え、ナニコレ。

黒髪は先程までの凶悪顔を真っ赤に染めて「てめぇ今夜覚悟してろよ」と銀髪を睨んだ。銀髪は悪戯が成功した子供のような笑顔で「いやーん!土方なにする気ー?」とおどけてはしゃぐ。
…え、どういうこと?

「……一万円で」

その一言でハッとしてお札を受け取り、レジに通す。自動で出てきたお釣りを渡すと、2人は時間が惜しいとでもいうように、足早に店から出ていった。
手を絡ませ頬っぺにちゅーをするというイチャイチャっぷりを見せつけながら。

「……早くバイト終わらないかな」






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