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□独占欲の華
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自分でも意外なことをした、と横布団に包まる女を見た。女を、というよりは女の身体を、と言った方がいいかもしれない。
陽に当たったことがないかのように白く肌目細やかな肌には、己が付けた鬱血跡が散らばっていた。

最近はなんだかんだと仕事が忙しく、彼女と会うことすらままならなかった。久しぶりの情交であった今夜は、少し気持ちが抑えられなかったかもしれない。鬱血跡だけでなく噛み跡まである細い身体は、グッタリと薄い布団に沈んでいた。

「……銀時」

名前を呼ぶともぞもぞと布団が動き、不機嫌そうな瞳とかち合う。

「…んだよ。寝かせろ」

「可愛くねーな。昨日は散々甘えてきて可愛かっ…いってぇなバカ!」

バシンッと小気味のいい音を立てて素肌を叩かれた。かなりの痛さに飛び起きて擦っていると、彼女も身体を起こした。身体をシーツが滑っていく様が艶かしい。

「二十も半ばで可愛くてたまるか。恥ずかしい奴だな」

「俺からしたらお前の全部が可愛いんだからいいだろうが」

少しでも甘い空気を長引かせたくて(元からないとか言うな)気障な台詞も言ってみたが、彼女にしたら照れが増しただけらしい。
そそくさといつもの気だる気な格好に着替えると、真っ赤な顔のままバカかしね、と呟く。ツンデレか。
そのまま部屋を出て行こうとする腕を掴んで、再び布団に身体を押し倒した。ガバッと開いた胸元からくっきりと出来た谷間が見えて、なんとも扇情的だ。

「お前もう少し前しめろ。襲われるぞ」

「そんな物好きお前だけだっつーの。てか服着ろヘンタイ」

「…その変態が好きなんだろ?」

耳元でわざと低く囁くとぴくりと反応する様も、顔を赤くしたまま睨むのもただ可愛いだけだ。昨夜の興奮が舞い戻って身体の内から熱くなってくる。欲望のままこの身体を抱きたくて、彼女の機嫌を伺うようにふわふわの髪を撫でた。彼女はその手に自らの手を重ね、桃色の頬を擦り寄せる。
あまりに可愛いことをするので我慢できずに豊満な胸に顔を埋めた。

「くすぐったいんですけど」

「……なぁ、跡つけていいか」

「見えるとこはダメー…っ、て、ちょ、んぁ」

彼女を無視して柔らかな肌に噛みつく。優しく食むようにしてやると、それだけで気持ち良さそうに喘いだ。気分がよくなりちゅう、と鎖骨に跡を付ける。服に隠れないところなので、この格好では外に出られないだろう。調子に乗ってどんどん跡を付けた。

「バ、カ…ッ!んなに跡付けんな!病気みたいになる!」

「恋の病か?」

「アホか!…ん、あ、」

跡を付けたところをなぞるようにキスを贈る。ちゅ、ちゅ、と可愛らしい音を立てて彼女の肌を愛でた。

「銀時……イイだろ?」

「ゃ、もう…っ、土方!」

ガッと頭を押さえつけられて、胸に顔が沈む。いつもなら幸せ過ぎる状況だったが、谷間にしっかりと収まった鼻と口から呼吸ができなくなってきて、思わず布団を叩いてギブアップを伝えた。

「ぷはぁっ!……銀時!てめぇ殺す気、…か!!??」

やっと息が出来たと思ったら、胴に足を掛けられてすぐにマウントポジションを取られる。思わぬことに困惑していると、そこには彼女のニヤニヤした顔があった。

「俺も、いいよな?」

「は!!??……あっちょ、待て!」

柔らかい感触を感じた時にはもう遅かった。じゅうう、と痛いくらいの音を立てて吸われた鎖骨には、綺麗に紅い跡が残っていた。
おざなりにもう一度口付けると、彼女の唇は離れていった。

「どーすんだよコレ…組の奴らに見られたら恥ずか死ぬ」

「これでお前、休みでも着流し着れねーな」

「あぁ?何なんだよ?」

うっとりと目線を自らが付けた跡を落とす。その表情にまた劣情が煽られた。

「……仕事が終わったら、隊服のまんま真っ直ぐここに来いよ」

「え、」

それって、と言葉を発する前に彼女は抱き付いてきた。目の前に見える耳は真っ赤に染まっていて、それを見た俺もなんだか恥ずかしくなってしまう。

「……それって、俺に早く会いたい、ってこと?」

「……………わかれ、バカ」

抱き付いてくる腕の力が強くなって、彼女が照れているんだとわかる。なかなか会えなかったからか、寂しい思いをさせていたのかもしれない。俺に気を遣って寂しいだとか会いたいだとか、絶対に口にしない彼女の精一杯の甘えが嬉しくて仕方ない。



今日は一時も離さないと誓って、愛しい彼女を抱き締めた。



end.



☆『Can I kiss you?』提出作品

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