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□たらりらりん
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たらりらりん





「ふふっふーふふんふふ、ふふふふふ、たらりらりん♪」

「…なんだその歌」

夫婦になって久しぶりのデート中のことだった。銀時は決して上手いとは言えない鼻歌を楽しそうに歌い出した。

「最近気に入ってんの」

「なんの歌?」

「CM。ビールだったかな」

「そんな歌あったか?…あ、この店?」

「俺のスペシャルパフェ!」

店が見えた途端俺を置いてダッシュで向かうあたり、学生の頃と変わらない。パフェに夢中なのを若いと言えばいいのか、ただの糖尿病予備軍といえばいいのか……。店の入口で早く早くと満面の笑みで俺を呼ぶ可愛い姿に、置いていかれたことに少しムッとしていた気持ちも萎んでいった。



「えーと、スペシャルパフェと、スペシャルバナナチョコパフェと、スペシャルイチゴパフェと、それから抹茶ぜんざ「スペシャルパフェだけください。あとコーヒーブラックで」

デザートだけを大量注文しようとする銀時をなんとか制する。店員に笑われてるにも関わらず、銀時は思いっきり不満顔だ。

「ボーナス入ったからいいって言った!」

「一度に大量に食っていいとは言ってないだろ。本当に糖尿病になんぞ」

「……十四郎のケチ」

ブーブー文句を言う姿もまた可愛くて、愛おしさがさらに積もっていく。その可愛さに根負けして、来週また連れて来てやると言うと銀時は嬉しそうに破顔した。

「ふふっふーふふんふふ、ふふふふふ、たらりらりん♪」

「そんなに嬉しいのかよ」

「うん!」

なんでこんなにアホ可愛いんだ。俺が押し倒したくなっているのを知ってか知らずか、トイレに行ってくると銀時は席を立った。

「……さっきの奥さん可愛いね」

すると仕切の後ろの席からコソコソと声が聞こえた。近くに客がいないので、どうやら若い女性が2人、俺達の話をしているようだ。俺は銀時が可愛いと言われたことに気分がよくなり、そのまま聞き耳をたてた。

「可愛かったけど、なんで奥さんてわかったの?まだ2人とも若いし、カップルじゃない?」

「だって…さっき奥さんが歌ってた鼻歌の歌詞、知ってる?ほら、ビールのCMの」

「あー!わかった!『わたっしーの旦那は、世界一、たらりらりん♪』ってやつでしょ!?」

ブ―――――――――っ!

「お客様!?大丈夫ですか!?」

ちょうど来たコーヒーに口を付けた瞬間、衝撃の一言によって俺はコーヒーを吹き出した。
ていうか、銀時が……え、え?


マジでかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!


「何してんのお前?」

店員に謝りながら席に帰ってきた銀時を思わず凝視する。
後ろの席では相変わらず銀時について話す声が聞こえた。

「お前、さ、あの鼻歌の歌詞…」

「え!?」

今度は銀時がビックリしてパフェのスプーンを落とした。その顔は真っ赤に染まってタコのようだ。

「……た、『たらりらりん♪』のとこが、好きなんだよ」

動揺しているのか、スプーンの湾曲している部分でクリームを掬おうとしている。いや、その言い訳は無理だろ。お前顔真っ赤だし。

「……『可愛い人見つけた』」

「―――――っ!」

銀時をじっと見つめて、思い出したCMの旦那の台詞を返すと、さらに真っ赤になった可愛い顔がこちらを凝視した。
あんまりにも可愛くて頬が緩む。そんな俺を見て笑われたと思ったのか、もう歌わないと呟くと、その小さな口にパフェを運んだ。

「銀時」

「……んだよ」

「今夜、子作りしような」

「……ばか」



おしまい


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