short

□11月22日
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「…おはよう、銀時」

「ん……はよ」

カーテンから漏れる光が眩しくなったのか、身じろぎ始めた彼女に声を掛ければ、ぼんやりしながらも返事をしてくれた。

今日は俺が午後から出勤になったので、昨日は彼女の家に泊まって久しぶりにイチャイチャすることができた。

「今、何時?」

「もう10時だ。ゆっくり寝過ぎたな」

「……だって、昨日土方が離してくんなかったから」

腰いてぇよ、と文句を言いつつも、顔を赤らめて恥ずかしがる様は可愛くて。思わず後ろから抱きしめて、真っ白で綺麗なうなじにキスをした。

「ん…っ、バカやめろって…」

「なぁ、一回だけ……」

まだ素っ裸なままでこんな至近距離にいるため、俺の息子が反応してしまう。腹に回していた手をスベスベな肌に滑らせて、彼女の豊満な胸を揉んだ。

「ぁ、ゃん…ちょお、バカ!」

「いって!」

露出していた肌をバチンと叩かれて、あまりの痛さに俺が離れた途端彼女はベッドから出ていってしまった。めくられた布団から温もりが逃げていく。

「ホラ、仕事12時からなんだろ?飯食うぞ」

「……ヘーイ」

彼女は簡単な服に着替えるとテキパキと料理を作っていく。
俺が泊まる日は必ず朝は和食。
前に和食が好きだと言ったらよく作ってくれるようになった。
今日はわかめと豆腐のみそ汁、筑前煮、鮭の塩焼き、甘めの卵焼き、それから昨日の夕飯の残りの炊き込みごはんだ。

「ごちそうさま」

「茶碗水に浸けといて」

二人分の容器を持ってシンクに置くと、この間二人で買いに行ったマグカップが水切りかごに並んでいた。俺が白で、彼女が黒。
俺の家には同じように色違いの茶碗がそろっている。会えない時でもお互いを思い出せるようにと、珍しく素直に可愛いことを言ってくれた彼女を思い出す。
つい顔がにやけてしまったのを彼女に見られなかっただろうか。

「土方ー、早く着替えないと間に合わないぞー」

「ああ、今」

俺が着替えるのをぼーっと眺めながら、彼女は黒いマグカップで砂糖たっぷりの紅茶を飲んでいる。かごの中に残された白いマグカップを思うと、少し寂しくなった。

「忘れもんない?」

「ああ、大丈夫」

「ネクタイ曲がってる」

「直して」

「……しょーがないなぁ」

「いいか?」

「――ん、だいじょぶ」

「………なんか、」

「なに?」

「新婚みてぇだ」

ポカンとする彼女に、さらに俺は言葉を続ける。

「なぁ、……一緒に、暮らさないか?」

まだポカンと俺を見つめる彼女が可愛くて、ちゅっと軽く唇を奪う。途端にぼっ、と火がついたように赤くなった彼女は、ようやく言葉の意味に気付いたようだ。

「そ、それ、それって…っ!」

「…また今夜ここに帰ってくる。その時返事してくれ」

今度は前髪をかき分けて額にキスをした。彼女のふわふわの銀髪を撫でてから、俯く顔を覗き込む。その顔は真っ赤で、瞳は少し潤んでいた。

「……ここはおめーの帰る家じゃねぇぞ」

「ははっ、ああ、そうだな」

「でも、」

「ん?」

「……“俺”が、土方の帰る場所なら、いいよ」

ポロポロと涙を流しながら、けれど満面の笑みで彼女はそう言った。世界一綺麗な笑顔だと思った。





最愛の彼女と俺が一緒に暮らし始めるのは、そのすぐ後のこと。



fin.


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