short
□fight!
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fight!
玄関を出るとチラチラと雪が降って、道路に積もり始めていた。
もうあと数日しか着ない制服の肩がしっとりと濡れる。
マフラーに顔を突っ込んで寒さを紛らわし、サクッと音を立てながら出発した。
「―――銀時!」
「先生!?どうしたんだよ!」
もうすぐ駅に着く、というところで家庭教師をしてくれていた土方先生が、車の中から顔を覗かせて俺を呼び止めた。
「今日、頑張ってこいよ」
「大丈夫!俺ならやれる!」
「ハハッ!そうか………ほら、これ持ってけ」
「え……?お守り?」
それは白の生地に金の文字で学業成就と書かれたお守りだった。
「だけど先生は神頼みとかしないんじゃなかったの?」
「う、うるせぇ!いらねぇんなら返せ!」
「にひひ。ダメ返さない。いるいる!……マジでありがとう。すげぇ嬉しい」
そういうと先生は照れたみたいで、顔が真っ赤になった。
外にいる俺は、車内にいる先生を見下ろすような形で、その様子を見ていた。
「………銀時、ちょっと屈め」
「ん?なんで?」
「いいから早く」
いきなり真剣な顔になった先生を怪訝に思いながらも、車内を覗き込むように顔を近づけた。
――――一瞬の出来事だった。
ちゅっ
「……………へ、」
「―――こういう時は、目ぇ閉じるもんだぜ?」
「ぁ、う、ん?」
「ほらもう行け。電車でるぞ」
「…うん」
「終わったらすぐ俺ん家来い」
「うん?」
グッと引き寄せられて本日2度目のキスをされた。
そして耳元で一言――――
「――ご褒美、欲しくねぇか?」
今日の受験、頑張れるかも―――
おしまい