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□恋の予感
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恋の予感





今まで恋なんて興味なくて、だからこんな気持ちは初めてで、どうしたらいいかわからないんだ。





「銀ちゃん、もうすぐマヨラ来るアルヨ?」

「わ、わかってるよ!けどよ、まだ心の準備が……」

「何言ってるんですか。メールはできるくせに挨拶はできないなんて変ですよ」

「ゔ〜」

銀時はクラスメイトである土方に想いを寄せていた。
最近やっと彼のアドレスを聞き出し、メールはできるようになったのだが、直接話すことがなかなか出来ずにいた。

そこでみんなに相談すると、まずは挨拶からだということになり、今こうして教室の入口で土方を待ち伏せしているのだった。

「はぁ……俺、今までこんなに緊張したことねぇよ」

「それアドレス聞いた時も言ってましたけど。……あ!」

「銀ちゃん!マヨラが来たネ!」

「えええ!どどどどうしよ!?」

「いいから早く行くヨロシ!」

銀時はドンッと勢いよく廊下に突き飛ばされると、今度は何かにぶつかった。

「うおっ!」

「……わあああ!ひひ土方くん!ごごごごめん!」

「何してんだよ。大丈夫か」

「はえ!?あ、だいじょぶ!」

ぶつかったのはなんと意中の相手である土方で、しかも抱き留められるように支えられていた。

「あ、あのさ、はな、離してくんね?」

「ん?ああ、悪ぃ」

自分から離せと言ったのに、離れていく体温が寂しい。
少しだけしゅんとした気分に浸っていると、土方は銀時にわからないくらいに小さく微笑んだ。

「お前、俺になんか用があったのか?」

「へ!?」

「ここで俺のこと待ってたんじゃねぇの?」

かぁっと顔を真っ赤にして押し黙る銀時に、土方は意地悪く言う。どうすることもできず、ただ銀時の心拍数が上がっていく。

「……じゃ、俺教室行くから」

「―――――ま、待って!」

意を決して土方を呼び止めた。
彼が振り向くまでの時間がやけにゆっくりに感じる。

「あ、えと、」

「ん?」

「お……………おは、よう」

真っすぐ顔は見れなかった。
明後日の方向に目を向けるだけで精一杯。
俺の顔はすごく真っ赤になっているに違いない。

「………ああ、おはよ銀時」

返ってきた笑顔と言葉に、また心臓がばくばくしてくる。
なんだか恥ずかしくなって、無意味にその返事にぶんぶんと首を振って頷いていた。



―――その姿に、土方は銀時の見えないところでやさしく笑うのだった。



おしまい


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