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□傘と、あなたの背中
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傘と、あなたの背中





雨の日は定春を連れずに一人で散歩へ行く。
武器にも日よけにもなるそれを、今日は傘本来の使い方でさす。
いつもさしていても鳴らない滴の跳ねる音が耳に心地好い。

こうやって一人になると考えるのは、やはり遠くの宇宙にいる父のこと。
きっと今日も何処の星で、敵と戦っているんだろう。


私もいつか、あの肩に並びたい。


夜兎の血と戦って、大事な人たちをまもりたい。
そう遠くない未来、父について宇宙を飛び回ることになると思う。けれどそれまでは、この小さな江戸という街に住む大好きな人たちを、まもれるようになりたい。

あの人みたいに―――――





「神楽、おめーこんなトコにいたのかよ。飯の時間だから帰るぞ」

「銀ちゃん!」

「ったく。ほら、行くぞ」

迎えに来たのかと思いきや、私の姿を見つけるなり回れ右。
私があなたのそばを離れない自信があるのか、なんなのか。

でも、

いつも私の前を行く人だから。
そうやってまもってくれるから。


私は安心してあなたを追い掛けられる。


「……銀ちゃん!私、銀ちゃんより大っきくなってみせるネ!!」

「…は?何が?乳?それなら大丈夫だ、神楽。そんなペチャパイでも俺よりはデカ……ぐほぉ!」

「そういう意味じゃないアル。小さいデカいでなんでも乳の話につなげるんじゃねぇよ」

本当は私の言いたいこと、わかってるくせに。
この人は私の考えていることなんて、いつもなんでもお見通しだ。(少し憎い、なんて、ひみつ)

「銀ちゃん、おんぶ!」

「あ゙ー?」

「早く!するヨロシ!!」

「……しょーがねぇな。しっかり掴まってろよ。傘もちゃんとさしとけ」

ホレ、と言って目下にくる、大きな背中。
飛びつくように乗っかると、ふわりとただよう甘い香りとともに感じる温かさ。
ついでにぐえっ、と蛙の潰れたような声。
大っきくて、あったかくて、いいにおいがして。


この背中に、まだまもられていたい。
そばにいたい。


「銀ちゃん」

「んー?」

「大好き」

「……そっかー、俺ら相思相愛だなぁ?いっそ結婚でもすっか」

「それは嫌アル」

「……………ぐすっ」


泣き真似を続けるゆらゆらと揺れる肩に、うとうとと眠気が襲ってくる。
いまだに「最近の子は」とか「パピー寂しい」だのと言う、ちょっと情けない、優しい声を聞きながら、私は夢の中へ旅立った。



end.


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