◇ plan ◇

ONEPIECE Alice(迷い森編:前)
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確かに、常に生死の狭間にいて、一般の人達から白い目で見られている海賊だけど…私だって、ちゃんと女の子で乙女なのだ。

お姫様のピンチに白馬に乗って現れる、強くてカッコよくて優しい王子様や
私とだけ会話ができるような、メルヘンで愛らしい小動物達、
そして、一度は行ってみたかった不思議な世界。

小さな頃は、ずっとそんな沢山の絵本の中の、夢のような世界に憧れていた。


だけど――現実はそうはいかない。もう十二分に分かってる。


憧れていた王子様は、白馬じゃなくて海賊船に乗ってるし。強くてカッコいいけど…性格にかなりの難があるし…何より怖い!!!
メルヘンな動物?…確かに可愛いよ、喋るしさ!でも…私より何倍もデカいしリアル白熊だよ。
不思議な世界…それはそうだね、日常的に冒険はしてるかも…色々と。



* * *
昨夜は、日中の部屋掃除の最中に偶々見つけた懐かしい絵本の山に心引かれて…朝方まで夢中で読み老けてしまっていた。
そうーだから、こんな変てこな思考をしているんだ…きっと、そして、眠い。


「おい、次お前の番だぞ!!」
シャチ君が、数枚のカードを手に持ち私に差し出している
「うーーん」
落ちてくる瞼を必至に堪え、カードを一枚引いた…
「うっしゃッ!!上がりい↑↑」
「あ…」
手元では、逆さになったジョーカーが私に笑いかけていた。
「オマエ!今日は、何時にも増して弱かったなぁ(笑)」
「きょ、今日はなんか眠くて頭が働かなかったの…」
「うわっ、言い訳かよーこの負け犬」
「うるさいなー!!ちょっと続けて勝っただけ……」
「っ…あっ‼お、おい、おおーーい!!!!」
「寝てるねぇ?」
「だ…よな!?」
細い指先からパラパラとカードを落とし、シャチとの口論の最中に、少女はパタリと白熊に寄りかかった体勢で眠りに落ちた。




* * *

「起きて、起きて‼」

柔らかな木漏れ日を帯びながら、優しく誰かに起こされて、少女はゆっくりと瞳を開けた。

すると、そこには…
真っ白で、ふわふわで、小さくて、可愛らしいギンガムチェックの服を着た…あぁモノクルまで……
「べっ!ベポっ!!!!!」
少女は慌てて身体を起こし、その小さなもふもふをまじまじと見やった。
「ん?ベポ??何言ってるの??あっそんな事より急がなきゃ、急がなきゃ!!遅刻だ、遅刻!!」
「え!?ちょっとベポってば」
少し大きすぎるのではないかと思う懐中時計を抱えて、小さな白熊は、猛ダッシュで少女の前を横切っていった。
「まっ!待ってってば、ベポぉー!」
気だるい身体を立たせると、少女は本能的に、その後を追うのだった。



「あれ?どごにッ!!ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――」
小さな白熊を見失ったと思った途端、大きな穴に足を取られ…真っ逆さまに落下した。

真っ暗な穴は、何処までも続き…恐怖に眼を閉じる。





―ぽふーん―

もうダメだ…と死を覚悟していた少女だったが、まるで高級ベッドのような弾力の…キノコの上に無傷で着地した。

「ぅ…そ、生きてる…」
足場の悪いそこに立ち、辺りをみれば…今まで見たこともないような大きな木々や草花が生い茂っていた。
「…よく生きてたな…私…ハハハッ(苦笑)」
スルスルとキノコから身体を降ろした。



「白熊ならあっちに行ったぞ」
突然背後から声がして、恐る恐る振り返ると…
「あ、え?えっと確か…麦わら海賊団の…ゾロさん?」
名前は挙げてはみたものの…明らかに何処か可笑しい。
「イヤ、違う。芋虫だ」
「………ハハハ(苦笑)」
「切るぞ(怒)」
「すみません。」
「まぁいい。んで、白熊探してたんじゃないのか?」
「…えぇ…とそう…なのかな??」
「知るか、とにかく白熊ならあっちだ」
芋虫が指さす方向を一目してから
「どうも、ご親切にありがとうございました。」
少女は深々と頭を下げて、正反対の方へ足を進ませた。
「なんでだよ!!(怒)」
「ひっ!!ごめんなさーい。」

慌てて走り去り芋虫と別れると、それとなく舗装された道を少女は進んでいく。
   

しばらく歩くと、眼前に大きな門の屋敷が見えた。
「『Hatter』・・・って、帽子屋さん?」
門の前に立つと、まるで招かれているかの様に門が開き、少女は何の躊躇いもなくその中へと足を踏み入れるのだった。



「船長、何でお茶会なのに、ワイン?しかもワインならせめてグラスで」
「文句あんのか?」
「いや…何も」

何処からか声が聴こえ、その方へ歩んでいった少女の眼に飛び込んできたのは――

普段よく目にするもふもふのキノコの様な帽子、それに羽やらトランプをあしらった極めて珍妙なソレを被った青年と、その迎えには茶色い兎耳の着いた帽子を被った青年2人が、何故だかティーカップにワインを注いで…雑談を繰り広げていた。


「…(あぁ…これは夢だ)」

少女は改めて、現状を把握した。
「(帰ろう…)っくΣΣ」
余りの衝撃的な光景に脚が竦み、帰るにも帰れない事態に陥った…。
「(お願い…動いて‼私の脚ぃー)」



「盗み見とは…悪趣味だな。アリス」


「…っΣΣ」
背後から聞こえた低い声に、少女は脚だけでなく全身が停止した。 


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