戴き物のSS
□雪の夜に寿ぐ
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呆然と突っ立っていたジークの肩を、乱暴にライアンが叩いた。痛いと顔をしかめる暇もなく、飲め、と溢れんばかりに酒を注がれて、飲んだ傍からまた酒が継ぎ足される。
「あたしのお酒も飲みなさいよ」
「ああ、これも美味いですよ」
「ええっ?」
前から左右から、酒だ肉だと勧められて、目がくらくらする。
「ちょっと待ってよ、そんなにいっぺんに食べられないよ!」
これでもかと突きつけられたご馳走にジークが笑い声をあげたとき、アリーナがほっと息を漏らした。
「笑った…」
「え?」
「言っただろう。過去に生きるには早すぎると」
未来を見ろと、ライアンが背を叩く。お前はまだ若いと、ブライがしわくちゃの手でジークの頭を撫でた。女も抱かずに一人前の男にはなれないと、こっそり小突いてきたのはトルネコだ。
「あなたは一人じゃありません」
「無理に里で暮らせとは言いませんが、私たちがいることは忘れないでください」
「たまにこうして遊びくるけど。いいよね?」
クリフトが、ミネアが、アリーナがかつんとカップの縁を合わせてくる。
「嫌だっつっても来るわよ」
ニヤリと笑ったのはマーニャで、これには全員が声をあげて笑った。
「そうね、せめて年に一度位は誕生日を祝いに来てあげるわ」
マーニャが杯を掲げるのに合わせて、全員が杯を空に向けた。
「おめでとう!」
雪の空を明るく染めて、その日の夜遅くまで酒宴は続いた。
聖誕祭。
終わりの夜と、新しい朝。
世界を終焉から救った勇者が、生まれた朝。
なんかもう何がしたいのか?(・・;)(;^_^A
2013年クリスマスSS
20131224