戴き物のSS
□結婚するなら
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「クリフトちゃんってば公務員だったんだぁ〜」
「そうですよ、マーニャさん。神官とは国家の官吏(かんり)として神に仕える者のことですから」
「かんりって何?」
「公法上の任命行為に基づいて任命され国家機関に勤務する者をいうのですよ」
「ふーん。難しいコトはよくわかんないけど、城に仕えるバリバリの公務員ってことよね」
アタシはにんまりしてアリーナに近付いた。
「ねぇ、アリーナ。結婚するなら絶対に公務員よ!
このご時世、一国の王女と言っても戦争や飢餓でいつその身が落ちぶれるかもわからないわ。
クリフトちゃんみたいな公務員つかまえて、一生安定した収入で養ってもらうのもテよ!」
アタシとしては、なかなか進展のないふたりの仲をナイスアシストしたつもり。
アリーナが少しでもクリフトを臣下以上に思ってくれたら……なんて気を利かせたつもりだったのだけど。
「ねえ、マーニャ」
アリーナは申し訳なさそうにアタシを見た。
「クリフトはサントハイム仕えの公務員だから、城が落ちたらクリフトもその地位を追われちゃうの」
ってことは?
アタシは慌ててクリフトに向き直る。
「姫様が王女でなくなるときは、私が公務員でなくなるときなんです」
あちゃー。アタシったら余計なこと言っちゃった?
しかもよく考えたら不吉かつ不謹慎極まりなかったかも……
「ごっめんねー。で、でもさ、結局アンタ達って運命共同体なんだよね。だからこのマーニャちゃんの失言を許して……あれ?」
謝りかけて、ふたりの異変に気が付いた。
「もし城が落ちてもクリフトは生き延びてね」
「何をおっしゃいます! 私は一生あなたに仕えると決めているのですよ」
「ありがとう。でもクリフトは優秀な神官だもの。サントハイムでなくても立派にやっていけるわ」
「いえ、私はアリーナ様にこの身を捧げると神に誓ったのです!」
「クリフト……」
「……姫様」
なんかいいムードだわ。アタシはそっと部屋を出た。
災い転じて福と成す。これであのふたりがくっついたりしたらアタシがキューピッドってとこかな?
うん。マーニャちゃんの失言も、たまには役に立つじゃん!
ただでさえ恋にオクテなふたりだし、身分やら立場やら障害だらけの恋で先行きは心配だけど、……まあ、うまくやっていけるでしょ。
なんてったって『運命共同体』のふたりだから、ね。
−FIN−