戴き物のSS

□トライアル
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「姫様、私は何の病にも罹っておりませんよ。治らない病など尚更です」

「本当?」

アリーナ様は真直ぐに瞳を向けてこられた。その真摯な眼差しに私の心臓が大きく音を鳴らす。

彼女に想いを見せてはならぬ。臣下としての身分を弁えよ。

そう警告するかのように私の心に警笛を響かせる。

……嗚呼、そうか。この事か。

私の唇から思わず笑い声が洩れる。

確かに私は病に罹っている。マーニャさんも上手い事を言うものだ。

治る事など無いだろう。この病に薬など存在しない。

私には乗り越えられそうもないというのに、神は本当に酷な試練を与えて下さる。

もしも万物の霊薬パデキアのように臣下に相応しくないこの病に効く薬があるのならば直ぐに処方し、癒すというのに。

「……惚れた病に薬無し、か」

私の呟きにアリーナ様は眉を顰められる。

「え、何?良く聞き取れなかったけど……パデキアでも治らないの?」

私は今にも泣き出しそうな姫様の身体を己から離し、代わりにその手を取ると微笑んで見せた。

「大丈夫ですよ、これまで同様、貴女のお側に居続ける事には何の支障もありませんから」

「本当?でも、一体…何の病なの?」

「この病は心の中でのみ発生するのです。…身分を問わず、男女の分け隔てなく、誰にでもある日突然起こる病なのです。そう、…姫様にもね」

アリーナ様が瞬きをされた拍子にその瞳から涙が零れる。

「…私にも?」

私はこの、痛みを伴う優しい病を授けて下さった姫様の頬に流れる涙をそっと掬い上げ、囁いた。

「ええ。貴女にも、です」


後日、その話を思い出された姫様は、笑いながらこう仰られた。

『確かに私もクリフトと同じ病に罹っていたみたいね。だって、あの頃から私はあなたに対して冷めない熱を持っていたもの』

頬を染めながら微笑み、私を見上げてこられる彼女を抱き寄せ、笑みを返しながら私は思うのだ。

この病を消す薬は存在してはならないのだ。

この病を消してしまえば、手に入るかも知れなかった幸福まで消してしまうかも知れないのだから。

そして、私は酷な試練に対して粋なご褒美を用意して下さった神に対し、今日も感謝の祈りを捧げるのだ。






さくらさん、ありがとうございました!

艶っぽいクリフトくんを!という無理なお願いをしたにも関わらず、こんな素敵なお話を書いて下さいました♪

「……惚れた病に薬無し、か」

キャーーー!!言われたい!一回でいいからクリフトに言われたい(T▽T)

この内側から滲み出る色気、さくらさんのクリフトは本当にセクシーです。大好きです☆

どうもありがとうございました♪
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