戴き物のSS

□アリーナのケーキ
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「私がケーキを作ってくるわ!でも、それは寄付じゃないの!クリフトに食べてもらいたくて、作ってくるんだからね!」

「ひ、姫様!」
思わず喜びを隠し切れず、満面の笑顔になってしまったクリフトをアリーナは戒めるように続けた。

「女の子がケーキをもってくるなんて、気持ちがないと出来ないことなんだからね!」

さらなる喜びで目眩を起こしそうなクリフトに「ここで待ってなさいよ!」と告げ、アリーナは城の厨房に向け走りだした。


「姫様!なんの御用でしょうか?」
しょっちゅうアリーナにお菓子やつまみ食いをねだられている料理長は、ニコニコしながら尋ねた。
他のスタッフも、仕事の手を止めアリーナの返事を待つ。
皆、アリーナが「美味しい!」と言ってくれることが最大の喜びなのだ。
今度はどんなおねだりだろう、そうわくわくしながら待っていると・・・

「あのね!私にケーキを作らせてほしいの!でも部屋にキッチンなんてないし、
材料もどうやって手に入れたらいいのかわからなくて。ここを少しの間、貸してくれない?」

「!!」
「ななっ、姫様にそのようなことをさせては、私共が叱られます!お望みのケーキがあれば、私共が・・・」
「違うのよ、私が作ってみたいの!出来ればひとりで・・・。でも、皆が叱られてしまうのであれば、諦めるしか・・・。あっ、そうだわ!」

アリーナはまた、教会に引き返した。そして、

「クリフト!部屋の鍵を貸して、キッチンを貸してちょうだい!そこでケーキを作るわ。」
「!!な、なんですって!?それでは、私もご一緒します。神父様、少し仕事を抜けますが・・・。」
是非ともそうしろ、とうなずいている神父をアリーナは制し、
「クリフトのお仕事の邪魔になるわけにはいかないわ!キッチンを借りたいだけなの。クリフト、たまにあそこでお菓子を作ってくれるから、材料はあるでしょう?じゃあ、ここで待っていてね!」


「・・・クリフト。まさかお前、おかしな妄想などしてはいまいな?」
「(ドキッ!私の部屋で、私の為に料理をして下さっている姫様に、妄想しないはずないじゃないか!)・・・・・。」
「(やれやれ、わかりやすい奴め)・・・・・。」
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