戴き物のSS
□アリーナのケーキ
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いつものように、教会にクリフトを訪ねると・・・
女の子が、真っ赤になってケーキをクリフトに渡そうとしていた。
私は、咄嗟に花壇のかげに隠れて成り行きを見守る。
か、隠れる必要なんかないんだけどね、
なんでケーキなの?
クリフトの誕生日はすぎたはずよ。
だって、毎年私クリフトと一緒にお祝いしているもの。
クリフトに、「今年の誕生日ケーキはなにがいい?」って聞いても、毎年困ったように「姫様が食べたいものがいいです。」なんていうから、
毎年私は城の料理長に「今年はティラミス!」「今年はミルクレープ!」って、
自分の食べたいものをお願いして・・・
ま、まぁいいわ。
クリフト、どうするのかしら?
「あの、これは一体・・・?教会への寄付でしょうか?」
にこり、ともしない無愛想なクリフトに、私は少し安堵しつつも、
同じ女の子として腹が立ったわ。
この、ドンカン神官!
あの女の子の様子で、見てわからないのかしら?
すると女の子は、意を決したように
「わっ、私、ケーキ作りが得意なんです!そのぅ、クリフト様もケーキがお好きだって伺って・・・。お口に合えばいいのですけど・・・。」
やっぱりクリフトの為に作ってきたのね!
その答えに少々動揺したらしいクリフトは、コホン、と咳払いしながら笑顔で受け取った。
「ありがとうございます。私の口に合えば教会のシスターや神父も喜びましょう。私や皆さんは、ケーキにはうるさいのですよ。」
「!!・・・し、失礼しました。」
女の子、今にも泣き出しそうな顔をして去っていった。
クリフトって、ちょっと酷い。
笑顔であんな、「もう作ってくるな」みたいな言い方しなくても・・・。
だいたい、クリフト、ケーキにうるさい?
何食べても「美味しいですね」しか言わないじゃない。
女の子からもらったケーキを、「寄付です」ってシスターに渡してる・・・。
「だから、寄付じゃないんだったら!」
「!!」
「姫様!」
お、思わず声に出しちゃった!不思議そうな顔をして、クリフトが近づいてくる。
「姫様、もしかしてこのケーキを召し上がりたいのですか?」
「ち、ちがうわよっ!」
だけど、なんて言ったらいい?
あの子の代わりに、クリフトに言ってあげる?
でも、なんて?
あの子は、どんな気持ちでケーキをあげたんだろう。どんな気持ちで、ケーキをつくったんだろう。