戴き物のSS

□久しぶりに会えたから
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今日も公務があった。顔には出さないけど本当に大変だった。

自分は政治の事なんて分からないし、興味すらない。でもまあ、今まで旅に出て自由に戦っていた分、「興味ない」だけでは済まされないんだろうな。私は仮初にも王女なんだからこういう事にはもっと知っていなくてはいけないのかな。

あーあ、クリフトがいたらなあ。そう、クリフト。

何をするにも彼のことがふっと思いついて。なんでもできる彼の頭だったらこんなに溜まってしまった仕事もすぐに片付けてしまうんだろう。

仕事をするのは私じゃなくても・・・なんて思っているのは私だけかしら?

「クリフトに会いたいな・・・」

ふと唇からこぼれた言葉。

そんなこと、ワガママだって分かってる。私もクリフトも時間に追われて会うことなんて出来ない。最後に彼に会ったのはいつだったかな・・・?

そう思って私はカレンダーを見た。今日は日曜日だった。休みのはずの日曜に休めないのは大変だ。ゆっくりお祈りをする時間も・・・

「そうだ、教会だ!」

そういえばサランの教会では彼が働いていた。忙しくてあまりそっちには行っていなかった。今から行けば人も少ないし、クリフトにも会えるかもしれない。

なんだか目の前が開けたような気がした。私はさっそく教会へ向かった。


――――――


いそいで走っていったので、さほど時間をかけずにサランの教会についた。果たしてどう登場すればクリフトはびっくりするかしら。ドアをバーンと開け放つ?大きな声でクリフトの名前を呼ぶ?どうすればクリフトは喜ぶのかな?

そうこうしているうちに教会の中から足音がした。鼓動が速くなり、胸が高鳴った。ここでこう構えていればクリフトはきっと喜んでくれるだろう。

そしてドアがぎーっと開いて、中からクリフトが現れた。今までの思いがわっと溢れた。私は精一杯大きな声でクリフトの名を呼んだ。

「クリフトっ!」

向こうもまさか私がここにいるとは思わなかったらしく、目をぱちくりさせていた。しかし、すぐに姫様っ!と返して

くれた。ああ、安心する。クリフトの優しくて温かい声は。

「ずっと会いたかったの!」

私はいてもたってもいられずにクリフトに飛びついた。何でこうしたかは自分でも分からない。でも、クリフトの温かさに触れると疲れも嫌なことも忘れられる。

「姫様・・・。私もです。私は神官という仕事をしながら、わずかな暇が出来ては姫様のことを思っておりました。ああ、愛しい姫。まさかご自身から会いに来てくださるなんて。」

「そんな、私もずっと会いに来れなくてごめんね」

「・・・。」

急にクリフトは黙った。どうしたのかしら。もしかして明日までの仕事を思いだした、とか?どうしようもない不安と考えが頭をよぎる。

「ど、どうしたの?」

「いえ、凄く久しぶりなので・・・ああ、だめだ、もう我慢できない。」

クリフトにしては珍しいことを言っている。どうしたのかしら。

「え・・・?」

「姫様。」

やけに真剣になって言うクリフトがどこか可愛い。わざわざ改まって言う必要なんてないのに。でもそこがクリフトで、私はそんなクリフトが好きなのだろう。

「・・・好きです・・・」

急に言われて私はドキッとした。告白ってこんなタイミングでされるものなのかしら?

「すきって・・・。今更。」

ちょっとだけ冷静なフリをしてみた。クリフトの反応がとても気になる。

「分かってたわ。貴方が私の事が好きな事なんて。」

「そ、そうだったんですか?」

やっぱり信じた。本当にバカ正直なんだな、と思う。ほんとうに可愛い。自分も人の事を言えないけれど。

「嘘よ。分かってたなんて。でも、クリフトの優しさや温もりはずっと前・・・私たちが初めて出あった時から感じていた。今思うとその優しさも私の事を思い続けてくれたからだって分かったの。」

これは本当だった。大好きだっていう気持ちはもしかしたら昔からあったのかもしれない。ただ、今まで心の中に隠れていただけなんだろう。

「私も大好きよ、クリフトの事。」

「良かった・・・。愛しています。私の愛しい姫、アリーナ様。」

そう言うとクリフトは私も横抱きにし、すっと顔を近づけた。瞬間、クリフトの蒼くて綺麗で、でもどこか哀しげな瞳が間近で見えた。いつも自分はここに写っているのだと思うと嬉しい。いつかクリフトは言っていた。瞳にはその人が映るのだと。真っ直ぐで素直な心だったら瞳も綺麗で美しいのだと。

きっとクリフトの心は流れる川のように綺麗だ。きっとじゃない。そう、絶対。

と、瞳に注意が行っていたので、クリフトの顔が自分と至近距離だったことを忘れていた。

苦しいと気づいたときはもう遅かった。私の唇はクリフトに奪われていたのだから。

「きゃ・・・。」

やっと解放されて私は楽に呼吸ができた。

「すいません、姫様。思わず・・・」

「大丈夫よ。むしろ嬉しいの。クリフトのキス、ちょっとドキッとしたけど凄く気持ち良かった。ねえ、もう一回やってよ?」

そういうとクリフトは私を降ろして、一度真っ直ぐ私を立たせた後、ぎゅっと抱きしめて正面からもう一度キスをしてくれた。甘い甘い気持ちが心に溢れて来る。

ああ、この時間が永遠だったらいいのにな。

「姫様。」クリフトの顔が少し離れていった。「私、良い事を考えたんです。」

それはなんだろう。私は首を傾げた。

「もしも私が姫様と結婚できたら、公務は私がやります。そうすれば姫様も楽になるかと・・・。」

「それはいい案ね。でも、私はサントハイムの姫だから、公務も自分でちゃんとやるわ。いままでサボっていた分、お勉強もしっかりやらなくちゃ。だけど、結婚すればずっと一緒にいられるから、私のわからないところを教えてくれたりして、協力して行きたいと思ってるの」

「流石です。姫様」

「ありがとう。でも、クリフトが支えてくれたから、私はここまで来れたの。クリフトがいてくれて良かった。」

「私も姫様がいなければ人を愛する事を知れなかった。」

「きっとお互いにそれぞれを必要としているんでしょうね。」

「そうですね。今日は最後まで・・・良いですか?」

そう言うとクリフトは私をベッドに押し倒した。


終わり

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