たんぺん
□何度も名前を…
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「……ここ、どこ?」
新八は呟いてから、飲み込めない状況に整理をすることにしてその場に座った。
ついさきほどまで自分は、依頼人の全く来ない万事屋で掃除をしていたはずだ。なのに、急に視界がぐらつき"風邪かな?"なんて思いながら目を瞑り、次に開ければ目の前には閑かな村があった。
(…夢だよね)
あまりにも非現実な出来事に新八は自分は掃除の最中にそのまま風邪で倒れて、意識を失ったのだと認識することにした。
が
「新八ィィィイイ!!!」
「か、神楽ちゃん!?」
遠くの方から、砂煙をあげて向かってくる神楽を見つけると新八は目を丸くしてから彼女を見つめた。
「新八、ここはどこアルカ?」
神楽の言葉に気を失いたくなったが、爆発音と怒声が近くから聞こえ、それを許さなかった。
「お?メガネじゃねぇですかィ」
「あ?メガネ?」
「おぉ!!義弟<シンパチ>君にチャイナじゃないか!」
普段の新八なら"何に新八ってフリガナを付けたんだ、あぁん?"と姉さながらの笑顔で返すが、見慣れた大人が現われた安心感からホッと息を吐いた。
「ニコチンにサドにゴリラ…なんでいるアルカ?ここはどこアル?銀ちゃんは?」
瞳を揺らしながら神楽が思ったままの疑問を口にすると神楽以外が"あ"と声を漏らした。
「ホントだ…」
新八がこの妙な風景を見るまで、万事屋のソファで銀時は寝ていたはずだ。自分と神楽がいるのならば彼は何処にいるのだろうと新八は辺りを見渡した。
「すごい田舎ですねィ」
「武州みたいだな」
「似ているなぁ、懐かしい風景だ」
真選組メンバーも同様に辺りを見渡したが、神楽が何かを見つめて新八の裾を引っ張った。
「新八、見るヨロシ!」
焦ったような声色に全員が神楽の指を差している方向を従うように見てから、何かを発見する。
遠くに見える大きな山から降りてきたのだろうか、山に続く真っすぐな道を亜麻色の若い男性が誰かを背負いながらこちらに向けて歩いてきていた。
「良かった、人がいたんだ」
あまりの人気の無さに廃村なのかと新八は考えていたため、正直助かった、と思った。土方たちも同じなのだろう安堵の溜め息を吐いて近づいてくる彼を見つめた。
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