りくえすと

□過去拍手
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前世とは全く違う世界に初めは戸惑った。ターミナルどころか天人の存在すら有り得ない世界。

そして、面白いことに真選組は新撰組として江戸末期に存在していて、辰馬は坂本竜馬。ヅラは桂小五郎、高杉は高杉晋作、先生は吉田松陰としてこの世界では歴史に名を残す大偉人だ。



きっとパラレルワールドと言うのだろう。所々が似ていて、でも決定的に何処かが違う。




俺がこの世界に生まれてから、15年が経った。15年も経てば世界に違和感は感じれど不自由を感じることは無くなった。実にありがたい己の順応能力だ。



もちろん名前は坂田銀時でなく、男鹿虎白<コハク>。



前世では血の繋がった家族を知らなかった俺だが、今世では両親、加えて姉と双子の弟がいる世間的に幸せな家庭だ。



「虎白、古市が来た!」



今、俺の名を呼んでるのが双子の弟、辰巳。ヤンキー率120%を誇る石矢魔高校に通い始めた高校一年生だ。双子と言えども俺と辰巳は二卵性で、瓜二つというわけではない。
前世と同じ銀髪・紅目の俺と違い、辰巳は茶色掛かった黒髪に黒目だ。辰巳の性格は天然で鈍ちん、ドのつくSで変なとこで律儀だったりする。…まぁ、要約するとウチの弟は可愛いってことだ。



「虎白、あんた弁当忘れてるわよ!」



姉貴の名は美咲。石矢魔OGで石矢魔女子が所属するレディース・列怒帝瑠の初代総長でもあり俺と辰巳は頭が上がらない。だが、基本的に優しくて弟思いの良い姉貴だ。



『あ、あんがと姉貴!』
「はいはい、行ってらっしゃい」
『おう、行ってきまーす!』



あ、そうそう俺も石矢魔高校在学中だ。喧嘩は嫌いじゃねぇし、面白い輩が多いからな。

目付きの悪さは土方と張る弟に喧嘩を売ってくる馬鹿共を滅ぼさんと企む俺は幼なじみの古市曰く、ブラコンらしい。




「……相変わらず似てない双子だな」
「うるせぇよ、馬鹿め。古市馬鹿め」
『貴之はことあるごとに言ってくるよな〜』
「だってよぉ〜、双子って言えば一種の萌設定だぜ?なのに…似てるとこなんて喧嘩好きなとこじゃね?」



なんて言いやがるのは物心付いた頃からだから今では辰巳も俺も気にしない。だけど、何回言われても腹は立つので辰巳と一緒に何発か殴っておく。



「アバレオーガだ!」
「悪魔だ!」



石矢魔の周辺は、当たり前にヤンキーがうろついていて、屁怒絽様のような怖面は居ないにしても喧嘩傷などで一般人にはキツめな顔面が勢揃いしている。そしてそいつらに注目されているのが我が弟、辰巳だ。古市の付けたネーミングセンスの無い二つ名はヤンキー共の幼稚な脳髄に染みチョコのチョコのように上手く染みこんだようで学校内では大抵の奴が口にする。



さて、ここで幸か不幸か。



俺と辰巳があまりにも似ていない為か、たまたま名字が一緒なだけとヤンキー共は勘違いしているのだ。…馬鹿だろ。"男鹿"なんて名字なかなか無いだろーが。


「白虎も居やがる…」
「卑怯だなッ、アバレオーガめ…あの白虎を手中に収めるなんて!!」
「白虎…かっけぇ…」



……だからさ、俺は辰巳の兄貴なんだってば…と、何度と知れない溜め息を心の中で吐く。
以前そう言えば義兄弟的な意味合いで取りやがって、ヤンキー共の中で俺と辰巳は師弟らしい。




『…ハァ。辰巳、貴之…俺、屋上でサボるわ。たった今、究極にたるくなった』
「じゃ、昼に屋上行くからな」
「虎白はサボり癖あるくせに何で校内トップの成績なんだよォ!!」
「うるせーよ、馬鹿市」




何でって……銀さん(今は銀さんじゃないけど、これは癖だ)は仮にも前世の記憶があるからね。馬鹿の集まり石矢魔のテストならトップくらい簡単なんですぅー。





さって…と。



屋上でも行きますか。







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