カプリシオとカントリー

□第二話
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*愛子*



「えっとあの…すいませんでした」


「すまないアルな、うちの愛子のせいで」


「えっ私だけのせいなの!?」


「この兄ちゃんは愛子を避けたアル」


「……ほんとすいません」


愛子を避けて近くの建物にバイクが突っ込むという事故を目の当たりにした愛子と神楽は慌てて救急車を呼び付き添って、現在に至る。

今愛子たちがいるのはピザ屋のお兄さんの病室だ。
お兄さんは全治4ヶ月の重症。ピザの配達の途中だったらしく、後ろに乗せたピザが事故の衝撃で飛んだのを必死に抱えこんで普通に事故るより酷い傷を負った。

そんなお兄さんは怒ることもなく朗らかに笑って、怪我をした首をぎこちなく横に振った。


「そんな、謝らないでください。貴女が無事でよかった。可愛らしい娘さんに怪我を負わせてしまえば、俺はきっと店長に殴られてるし」


「大丈夫ヨ。愛子は見た目によらず丈夫だし中身は見た目によらないし」


「なんで神楽ちゃんが大丈夫とか言ってるの?てゆーか最近私に失礼なこと言うよね神楽ちゃん」


優しいお兄さんはそのやり取りにくすっと笑って。
そのあと、顔をしかめた。


「ああ、そういえばこんなところで寝てる場合じゃなかった」


「……え?」


「何してるアルか。まだ動いちゃ駄目ヨ」


包帯だらけの身体で起き上がろうとするお兄さんを、愛子たちは慌てて止めた。
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