夢.

□拍手2
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「洗濯物が乾かないぃ〜。」

がっくりと窓際で項垂れているのは俺の彼女。
どうやら朝方干した洗濯物がまだ乾いてないらしい。
うー、とうなり声を上げて窓越しに雨を睨みつけている。


そんなに空を見上げてもこの雨は止まないよ?

心の中で俺は呟きながら彼女へと近づいた。
壁に片手をつき頭を少しだけ傾げる。
すぐ目の前にはむくれている俺の愛しい人。

「ま、しょうがないんじゃない?天気予報だと暫く降るって言ってたし。」

「でもさぁ…。次の洗濯物あるし…。」

どうやら彼女の頭は目の前の洗濯物でいっぱいらしい。
口を尖らせてもごもご言っている。


折角会えたっていうのに、口を開けば雨が嫌だだの、暑いだの…。

もうちょっと俺に愛の言葉でも囁いてくれていいんじゃない?


「あのさぁ、もう少し俺に構ってよ。」

彼女の体温を感じたくてその背中を引き寄せた。

「う。」

微かに聞こえたのは恥じらうような声。
華奢なその体は力を込めれば折れてしまいそうな位儚い。
だから俺は大事に大事に抱きしめた。


もう、可愛いね。お前は。


自然に口元が緩む。
ま、俺の顔はお前からは見えないからいいんだけど。

「…カ、カカシだって…。」

蚊の鳴くような小さな声で俺の恋人は抗議を始めた。

「ん?」

「カカシだって、さっきから本ばっか読んでるじゃん!」

「あー。」

ちらりとソファを見やると俺の愛読書が転がっていた。

「馬鹿だネ。」

「ば、ばかとは何よ!」

俺の腕の中でくるりと向き直る。
気付くと目には少し涙が溜まっていた。

そんなに寂しかったの?

俺が困ったような顔をすると彼女は下を向いてしまった。


「…いいもん、別に。」

今度はぷいっとそっぽを向く。

「ほら、こっち向いて。」

顎に手を当てひょいと捻れば、潤んだ瞳で俺をキッと睨みつける彼女と目が合った。

お互い寂しかったんだね。

「ごめんネ。」

ちゅ、と音を立てて瞼にキスをする。

「うー…。」

全く、俺も重症だ。
彼女の怒った顔も、泣いた顔も愛しいと思ってしまうんだから。

ホラ、そろそろ機嫌直してヨ。

雨があがったらお前の好きな物を買いに行こう。


だから機嫌、直してよネ…?



おわり

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