夢.

□嫉妬
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・・・まただ。


幾度となくこの場面を見てきた。



それはカカシが綺麗な女の人と歩いている所だった。
長い黒髪で赤く紅を塗っているその女は
嬉しそうにカカシの腕に絡み付いていた。
傍から見たら、美男美女のカップルに見えるだろう。



カカシの彼女は私なのに・・・。


2人は私に気付かない。
それもそうだ。
私は今任務が終わったばかりで地味めな女の子に変化している。

メガネをかけ、髪はぼさぼさ。
鼻を低くし、目は小さく。
極力目立たないように変化した結果、こうなったのだ。


自分でそうしたのに、あの2人を見ているのは今の私はあまりにも惨めすぎた。



「早く報告書提出して帰ろう・・・。」



踵を返して帰ろうと背を向けた。
一刻もこの場所から立ち去りたかった。



「あれ?奇遇だね〜。」

「だぁれ〜その地味な女?」


残酷にもその言葉は私に突き刺さった。



「あ、どうも・・・。」

私は振り返り俯きながら返事をする。




何で気付くの・・・・。




私は心の中で呟いた。


「ん。任務、おつかさまね。」

カカシは今の状況に弁明もせずそう答えた。
ねぇ、早く行こうよ、と女が隣で催促している。


「そちらこそ、おつかれさまです。では私は用がありますので。」


なんとか顔を上げ、そう答えると私は一目散でその場から離れた。



もうやだ・・・・。



荒れた息を整いもせず、報告書を出し終わり自宅へ向かった。


ガチャ。


扉を開け、中に入りそのままベッドへ倒れこんだ。

「変化、解かなきゃ・・・。」


変化していたことを忘れていた。
それほどまでにあの状況を見るのはキツかった。

ボフンと私は変化を解く。


途端に思い出すのはあの2人。
目頭がじわりと熱くなる。


泣いちゃ、だめだ。

だが意思に関係なく涙が溢れる。

「・・・っく・・・。」

顔を枕に押し当てて、声を殺して泣いた。







どれくらいそうしていただろう。
辺りはすっかり暗くなっていた。


私は喉の乾きを潤すため冷蔵庫に向かう。


確か、水があったはず・・・。


冷やしてあるペットボトルを取り
水を口に含んだ。


「・・・はー。」


心地よい冷たさが気持ちいい。

そのとき、ドアのチャイムが鳴った。


カカシが私を呼ぶ声がする。

今は会いたくない。



「・・・・・・。」



私は息を潜め、外の気配を伺う。

しばらくすると、ドアの向こうから立ち去る足音が聞こえた。

のぞき穴を覗く。



誰もいない。



ふぅ、と息をつき振り返った瞬間

カカシがそこにいた。



「なんのマネよ・・・。」

「いやだってさぁ。気配ちゃんと消えてないよ?」

「うるさい。不法侵入者。」

「その言い方はないんじゃないの。俺、彼氏だし。」


私は思いっきり睨み付けた。
あはは、とカカシは指でポリポリと頬をかく。




「あのね、」


カカシが何かを言いかけたが
私はするりとカカシの横を通り抜けて
ソファに向かった。


「怒ってる?」

「別に。」

「隣座っていい?」

「・・・・・。」

カカシが隣に座り、しばらく沈黙が流れた。



「俺、前に言ったよね?今日任務で女から情報収集しなくちゃいけないって」


「・・・・・・知ってる。」


そうなのだ。
あの女が任務の相手だって事は
事前にカカシから聞いていた。
それでも嫌だった。
あんな風に会いたくなかった。


「でも、あの人綺麗だったよね。」

「な〜に言ってるのよ。もしかして嫉妬してるの?」

「うるさい。」


「・・・あれ?もしかして泣いた?目赤くなってるよ。」

「!!」

私は咄嗟に顔を背けた。

「馬鹿だねぇ。俺が愛してるのはお前だけなのに。」

カカシはそう言いながら
私を後ろから抱きしめた。

「だって、・・・愛が伝わらないんだもん。」

私がボソっと呟くと
カカシが笑いながら私を振り向かせる。

「これで伝わる?」


片手で口布を下ろす姿は何回見ても艶っぽい。
その姿に見惚れていると、ちゅっと唇が合わさった。
ぐぐっとソファに押し倒される。

「えっ?っちょ・・・・。」

言葉を言い終わらない内にまた口を塞がれる。

「いっぱい愛を注いであげるからねぇ〜。」

しまったと思った。
カカシにそんなこと言ったのを後悔したがもう遅い。

どこかでカラスの鳴く声がした。




嫉妬するのもほどほどに。

なんたって、私の彼氏は木の葉一の業師なんだから。





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