相互コラボ記念小説

□夏休み、どこ行く?
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こちらも修学旅行の定番、太秦映画村。

どうしても時代劇の扮装がしてみたい!という恭耶くんに押し切られる形で、恭耶くんの割り振った衣装に変装した。

私は何故か町娘。

折角だったらお姫様とかの方がいいのになぁ・・・なんて思いながら皆の元へ行って、納得した。


『ゆっ、優介くんっ!?可愛いっ!!なんて可愛い黄門様なのっ!?』


恭耶くんの陰謀により優介くんは水戸のご老公様になっていたのだ。


優介「え、えっと、僕は喜んでいいのでしょうか・・・?」


小さい体で白いひげを付け、困った顔で杖をついている姿はもう可愛い以外のどんな言葉でも表現なんて出来ない。


『恭耶くん、グッジョブ!!』


思わず親指を立てて恭耶くんを褒め称える。

そんな興奮気味の私に、恭耶くんは助さんの扮装で親指を立ててバチンと派手にウインクをした。

恭耶くんの反対側には格さんな貴臣さん。

こうなると先輩はまさかうっかりしたあのキャラなの!?と見る前から吹き出しそうになっていたら、先輩は全く違う姿で現れた。


『あれ?先輩八兵衛じゃなかったんですか?』


駿一「あぁ、恭耶がオレはこれを着ろと押し付けて来てな。同じなら八兵衛か弥七の方が浮かなくて良かったのだが。」


先輩の口から「八兵衛」だの「弥七」だの出て来る事に違和感があって思わず吹き出しそうになりながら、先輩を見る。

先輩は仲間外れ的な感じもする“お殿様”だったのだ。

でも・・・確かに似合いすぎてて違和感すらないよね。


恭耶「だって斯波さん絶対“お殿様”キャラっしょ?」


駿一「お殿様キャラとは何だ。お前は何が言いたい?」


日本人離れした彫刻の様に端正な顔の“助さん”が、凛々しい男前日本人代表みたいな顔をした“お殿様”と言い合いをしている。

そして、そんな2人を長身で美しいイギリス紳士風の“格さん”が上品に微笑みながら見つめていて、私の目の前では真ん丸で大きな目をくりくりさせながら、可愛らしい顔の“水戸のご老公様”が、こっそりと印籠を出す練習をしていた。

私はそんな様子がおかしくて仕方が無くて、写真を撮りまくったりしながらお嬢様には到底似つかわしくない程に笑い転げる。

そんな私の両手を先輩と恭耶くんが無理矢理引っ張って、とある場所へと連れ込まれてしまった。


『いやぁ〜!!殿、お許しを〜っ!!』


駿一「フン、笑った罰だ。」


恭耶「斯波さん、そこは『良いではないか良いではないか』っすよ。」


貴臣「それでは悪代官ではないですか。」


優介「名前様、大丈夫です!僕が絶対にお守りしますから!!」


『ううっ、有難う優介くんっ!』


連れ込まれた場所は“最恐のお化け屋敷”という触れ込みの、東映映画の技術力と演出力の限りを尽くしたというお化け屋敷。

しかもそんじょそこいらのリアルお化け屋敷と違って、東映の俳優さんが演技しているのだから始末に悪い。


優介「皆さん俳優さんなんですから、安心なさって下さい!」


優介くんの優しい言葉と笑顔に少しホッとした気分になっていると、悪〜い顔をした恭耶くんが耳元で囁いた。


恭耶「映画村ってさ、よくお侍さんの恰好した人が後ろついて歩いてたりするらしいぜ?見える人にしか見えないお侍さんがさ。」


『えっ!?』


ビクッとなって恭耶くんの顔を見ると、反対側の耳元で先輩が囁く。


駿一「ああ、お前が俳優だと思っている目の前のお化けは・・・果たしてどっちなんだろうな?」


『・・・・・っ!!!!』


声にならない叫び声を上げて固まった私の背後に立った貴臣さんが、両肩に手を掛けながら優しい声を響かせた。


貴臣「ご安心下さい、名前様。私が背後におりますから、後ろは安全でございますよ。」


目の前では優介くんが印籠を掲げながらニッコリと微笑む。


優介「いざとなったら、僕が助さん格さん懲らしめてやりなさい!って印籠出しますから!」


恭耶「うわ、それやられたら俺言う事聞かなきゃじゃんっ!!」


駿一「あぁ、黄門様には平伏さねばな・・・。」


『ぷっ、ふふふっ』


結局何だかんだと楽しくなって、水戸黄門ごっこをしながらお化け屋敷を出た。

元の姿に戻った私たちは、思う存分映画村を堪能してから、嵐山へと場所を移す。

渡月橋を眺めながら湯豆腐を頂き、桂川沿いにあるお宿へ向かった。

好きな柄を選んで借りられる浴衣に着替えて、団扇片手に鵜飼の見学。

ゆらゆらと揺れる舟から、篝火を焚いて行われる幻想的な漁を見る。


駿一「苗字が鵜だったら気が狂っているだろうな。」


『へ?どういう事ですか?』


恭耶「あぁ、折角餌捕ってんのに飲み込めない上に取り上げられるんだぜ?名前なら怒り狂うだろ?」


『むーっ・・・でもまぁ、否定はしません。』


露天風呂でゆっくりと体を休め、またこっそりと恭耶くんと優介くんの部屋へと向かう。

そっと引き戸を開けて中を窺うと、先輩と貴臣さんがいた。


『えっ?先輩達何してるんですか?』


恭耶くんと先輩が向かい合って胡坐をかきながらガイドブックに印を入れていて、部屋の隅では壁に凭れながら足を前に投げ出して座って、デジカメの画像を見ながらニコニコしている優介くん。

そして座卓の所で正座をして、丁寧にお茶を淹れている貴臣さんが居たのだ。

勿論、全員素敵な浴衣姿のままで。


貴臣「名前様、どうぞこちらへ。そろそろいらっしゃる頃かと思いまして、お茶をお淹れしておりました。」


穏やかで上品な微笑みを浮かべた貴臣さんにお礼を言いながら、私も座卓の所で腰を下ろした。


駿一「修学旅行の夜は男子の部屋で枕投げと怪談なのだろう?枕投げは昨晩やったから、今晩は怪談だな?」


意地悪くニヤリと笑った先輩に引き続き、悪戯っ子な瞳を輝かせた恭耶くんが言う。


恭耶「結構映画村から連れて帰ったりもするらしいしさ・・・人数数えたら増えてたりしてな?」


『いっ、良いんです!もう怪談はしなくていいのっ!ほら、もう明日は帰らなきゃなんだから、お土産物とか買う場所の相談をしようと思って来ただけなんだからっ!!』


慌ててそう言った私に、先輩と恭耶くんは顔を見合わせて小さく吹き出した。


駿一「ああ、そういうと思ってもうチェック済みだ。」


目の前のガイドブックを片手で持ち上げて先輩が言う。

入って来ていた時に見ていたガイドブックはその為だったらしく、私が好きそうなお店に見事にチェックが入れられていた。


恭耶「京都に行ったらあぶらとり紙買わなきゃ!とか言ってたろ?良い店見つけといたから、それも含めて買い物は河原町から祇園辺りでしようぜ!」


優介「明日は車で移動しますから楽ちんですよ!」


明日は朝から私の行きたかったお寺へ行くことになっている。

少し京都の中心部からは離れるけれど、ここ嵐山からなら車で直ぐのところにあるお寺。

草鞋を履いたお地蔵様がいらっしゃって、お願い事をするとお家まで願い事を叶えに歩いて来て下さるっていう話を聞いて、行きたくて仕方が無くて。

お地蔵様が迷ったりしない様にと、お願い事をする時に住所と名前もお伝えするっていうところが面白い。

でもすっごく霊験灼かなんだって。

帰り際になってバタバタしない様にと、しっかりお買い物スケジュールと買わなきゃいけない物リストを4人が作ってくれる。

私は「○○が欲しい〜」だの「お土産が必要なのはお爺ちゃんと〜」といった感じで適当に思いつくままに言ってただけなのに、希望を出し尽くした時にはもう綺麗に纏まったリストが完成し、お店を回る順番までしっかりと組まれていた。

この夜はちゃんと自分のお部屋でぐっすりと休み、早朝にもう1度露天風呂を楽しんでから車に乗り込んだ。


『鈴虫って・・・ちょっとゴ○みたいなんだね・・・』


鈴虫寺ではお茶とお菓子を頂きながら説法を聞いたのだけど、そこには夥しい数の鈴虫の入った籠があって、虫が得意ではない私には少し気持ちが悪かった。

恭耶くんと優介くんは面白そうに籠に張り付いて鈴虫を見ていたけれど。

お札を掌で挟んで上を少し出して名前、住所、お願い事をお地蔵様にする。

“立派なお嬢様になれますように”

少し遠いけど、きっと叶えに来て下さいね?とお地蔵様に微笑みかけて、お寺を後にした。

象さんのマークが可愛いあぶらとり紙は種類が物凄くいっぱいあって、お友達へのお土産はこれだけでいいかな?なんて思って沢山買い込む。

サンプルのあぶらとり紙を鼻に押し当てた貴臣さんが、紙に吸い取られた油を見て目を丸くし、少し落ち込んでいて可愛かった。

そして、全ての買い物を終えた頃に先輩は、私が昨日の朝に想像した通りの発言をした。


駿一「折角祇園に居るのだから西利に寄るべきだろう。」


恭耶くんの冷たい視線を浴びながら、「千枚漬け」に「ゆずの香り」をがっつり買い込んだ先輩がボソっと「祇園藤村も近くにあったはずだが・・・」と呟いた。

そんな先輩に貴臣さんが溜息交じりに付き合って買いに向かい、その間私達3人は辻利の抹茶ソフトを食べながら待っていて、無事満足げな表情の先輩が戻って来た所で、修学旅行的京都の旅に幕を下ろしたのだった。


end.

→あとがき

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