相互コラボ記念小説
□夏休み、どこ行く?
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その後、来た道を引き返し、祇園へと戻った私は4人に半ば強引に1軒の京町屋へと連れて行かれた。
中へ入るとそこは舞妓体験の出来るお店で、私はあれよあれよと言う間に舞妓さんへと変身させて頂いてしまう。
散策も出来るのだと言われ、「お連れさんがお待ちどっせ」と案内された先には着流し姿の4人が並んで立っていた。
周囲の視線は全て彼ら4人に注がれていたけれど、舞妓姿で登場した私を見るや、4人は揃って目を丸くして恥かしい程に頭の先から足元まで見つめてきて、恥かしい思いで微笑みながら問いかける。
『えっと、どう・・・かな?』
優介「お似合いです!とっても綺麗ですっ!!」
恭耶「おっ、おう!名前やばいくらい似合ってるって!」
貴臣「大変に愛らしい舞妓さんとご一緒出来るとは、鼻が高い思いですよ。」
駿一「フッ、フン。馬子にも衣装だな。」
『むー、こんな時くらい綺麗とか可愛いとか言ってくれてもバチは当たらないと思いますけど?』
男前過ぎる着物姿の4人をはべらせて歩く石塀小路や寧々の道は、大変に幸せだった。
やたらと写真を撮られて少し恥かしい気もしたけれど、私も珍しい姿の皆をたくさん写真におさめたし。
通り掛かりの人にまた全員の写真を撮って貰って、ニヤニヤとしながらこっそり携帯の待ち受けに設定しちゃったり、この写真を元にシールとか作っちゃおうかな?なんて企んだりしてしまう。
小1時間の散策を楽しみ、元の姿へと戻った頃には陽も随分と傾いていて、私たちはお宿へと向かった。
先輩がどうしても外せないと言って組み込んだ朝食を食べる予定の場所に程近い、立派なホテルの数寄屋風の別館に泊まる。
食事もお風呂も終えてから、私は自分の部屋にあった枕を2つ抱えて恭耶くんと優介くんの部屋に忍び込んだ。
部屋に入って中を覗くと、浴衣姿で転がっている恭耶くんと、きちんと正座をしながら日本茶を啜っている優介くんが居て、ふすまの陰から顔を覗かせて声を掛ける。
『えへへ、来ちゃった〜。』
優介「わっ!名前様!?どうなさったんですか!ご用でしたらお呼び出し頂ければ・・・」
恭耶「お前、使用人の部屋に来るお嬢様がどこの世界に居んだよ!・・・って、名前なんで枕なんか持ってんだ?」
『あのね?修学旅行っていうと先生の目を盗んで男の子の部屋に遊びに行って、枕投げしたり怖いお話したりするもんなんだ。・・・で、来ちゃった。』
ニッコリと笑った私を、恭耶くんと優介くんは面白そうに笑ってから部屋に招き入れてくれた。
恭耶「で、この場合の先生ってのは・・・」
優介「ふふっ、当然斯波さん・・・ですよね?」
『あ、それならこっそり貴臣さんも呼ばなきゃだよね?』
恭耶「いや、あの2人同室だから無理だろ。どうせ今頃明日の予定とか綿密に打ち合わせしながら分単位のスケジュールとか組んでるって!」
全く予備知識の無い2人に“枕投げ”の極意を伝授して、3人夢中になって枕をぶつけ合う。
大はしゃぎで少し声が大きくなって来た頃、ガラリと戸の開く音が聞こえた。
恭耶「やべっ!先生来たぜ!?」
ニヤニヤと笑った恭耶くんが面白半分に言う。
優介「えっと、こんな時はどうすれば??」
『お布団!お布団の中に隠れるんだよっ!!』
3人でお布団に潜り込む。
クスクスと笑いながら身を潜める私達を覆っている布団が一気に引っぺがされた。
駿一「恭耶っ優介!お前ら何を騒いでっ!・・・っ!?苗字?お前こんな所で一体何を!?」
まさかお嬢様まで隠れているとは思わなかっただろう先輩が、目の前で狼狽している。
私達は先生に見つかって怒られた生徒の体で、それらしく正座をしながら経緯を説明した。
先輩は呆れ返った様に額を押さえ、後から入って来て事情を聞いていた貴臣さんは耐えきれないと言ったように吹き出しながら、先輩の肩を叩く。
貴臣「まあ良いでは無いですか。今回は名前様たってのご希望で修学旅行をしているのですから。先生役としてお説教してはどうですか?」
珍しくもクスクスと肩を揺らしながら言う貴臣さんに、先輩はフンと鼻を鳴らしてニヤリと笑った。
駿一「何を馬鹿な。貴臣、一旦部屋に戻るぞ。枕を取って来て参戦だ!お前ら上級生に勝てるなどと夢にも思うな?」
音と声に気を遣いながら、深夜まで必死の枕投げは続いた。
勝敗なんて決まらない内に疲れ果てて布団の上に倒れ込む。
『もうダメ・・・動けない。もうここで皆で雑魚寝しましょうよ。』
言ったのを最後に私は記憶を手放していた。
明け方うっすらと目を覚ますと、私の寝ていた布団の両サイドに2枚ずつ布団が敷かれていて、4人が並んでスヤスヤと寝息を立てている。
何だか幸せな気分で二度寝して、朝寝坊をした私は鬼の様な顔をした先輩に揺り起こされてしまった。
朝はホテルの食事では無く、有名な料亭で“朝がゆ”を頂いた。
お食事とお宿に関しては先輩と貴臣さんが担当したので、しっとりとした大人旅という雰囲気が漂っている。
そして観光は私と優介くんと恭耶くんが計画を立てたので、逆に高校生の修学旅行感が全開なのだ。
年齢としては1〜2歳しか変わらないというのに、先輩たち2人はどうしてこんなに渋好みなんだろう?
普通に未成年が「よし朝がゆを食うぞ」なんて言うかな?
まぁ、薀蓄たれながら七味を買いまくった人だし、それを考えればしっくりくるのかもしれないけど・・・。
帰りには千枚漬けを買うなんて言い出すんじゃないかと思いながら、有名料亭にしてはひっそりとした玄関口を見つめた。
然り気ない建物の入り口をくぐると、中には苔生す日本庭園に茶室、日本の茶の心が細部にまで感じられる空間で、素晴らしく美しい煮抜き卵や、和え物、ぐじの蒸し物に精進の炊き合わせ、お豆腐のお汁、焼いた鮎に、ふっくらと水の美味しさを感じる白粥に丁寧に作られた出汁の味がする葛餡を掛けて頂く。
『日本人に生まれて良かったです。』
ボソリと呟いた私に、先輩が「お嬢様としてはここでの茶事を1度でも経験してみたいと思わないか?」などと意地悪く言った。
私のお茶の経験なんて付け焼刃でしか無いのを知っている癖に・・・意地悪なんだから。
雰囲気にも味にも満足してから、程近くにある南禅寺へ。
趣のある境内を朝の散歩がてらに散策し、琵琶湖疏水を引き込んだ赤煉瓦の水路閣を見る。
純和風な風景の中に現れるローマ風な建造物が美しかった。
広い境内をブラブラと歩き、小腹が落ち着いて来た頃には程良い時間になっていて、私達はホテルへと戻り、次の行き先へと移動した。
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